02 不安と始まり
真実の上に、あるようで、無いもの。奥に進むにつれて、人気のない場所へと進んで行く。
ワゴンが、指定された場所に来て、運転手に、竜也は名前を確認されて、乗るように促された。
入るとすでに、2人が乗っていて、1人はこちらを見ることもなく、無口な女で、ずっと車の外を見ている。もう1人は、帽子を深くかぶった俯いている男がいた。とりあえず、空いた席に座った。誰も挨拶さえ交わすことはなかった。そこに、明日実の姿はない。
たった、三人だけが参加するキャンプなのだろうか。車内は沈黙の中で進んで行く。
竜也は、どこか、明日実に騙された気分になってしまう。乗り込んだワゴンが、また、どこかに停まって、また1人乗ってきた。また、挨拶もせず、怪訝に、後ろの席に、女が座った。
ひたすら、山を登っていく。どこに行くのかさえ、よく変わらなかった。詳しくは、明日実が教えてくれることはなかった。とりあえず、参加してみなよと言われただけで、竜也は、参加を許可してしまったのだろうと考え始めた。
ワゴンが、コテージのような場所に着いて、停車した。運転手が「着いたよ」というと、誰もが話すこともなく、降りていく、最後に、竜也はワゴンを降りる。
「竜也、来てくれて、ありがとう。」
明日実が笑顔で、竜也の方にやってきた。明日実の隣に年配の女性が立っていて、
「こちら、私のお母さんだよ」と言って、その人物が竜也を見ている。
「竜也くん、3泊4日よろしくね。明日実ママって呼んでね。おばさんって呼ばれたくないのよ。」
「はい…」
明日実ママと、呼ぶにはまだ早いので、俯いてしまう。
「竜也、コテージに行くよ」
明日実が先導してくれて、コテージへと向かった。
「なあ、明日実、このキャンプって何なの?」
「内気な性格を改善するためのキャンプだよ」
「別に、改善するつもりないし、俺は困ってないよ」
「そう、内気って認識はあるんだ。じゃあ、手伝うつもりで、いてよ」
竜也は、明日実が何を考えてるのかよく分からない。
コテージに入ると、異様に笑顔のおじさんがいて、
「みんな、元気かな」と訳の分からないテンションでいる。
「荷物はそこに、置いて、自己紹介を始めよう」
そのテンションに歪さを竜也は感じているが、周りを見ても、そんな雰囲気を感じているのは、いないように思える。
「ああ、僕は西田幸次と言います。高校2年生です。」
ワゴンで、俯ていた男だ。
「私は石川麻帆といいます。高校2年生です」
竜也より後に、ワゴンに乗ってきた女だ。
「私は、中野亜美です。高校2年生です」
車の外をじっと見ていた女だ。なんで、同じく高校2年とか言わないんだろうと思う。まるで、会話をするつもりがないようにも見える。
明日実に肘をつつかれ、「えっ」と声が出てしまった。
「ああ、僕も同じく高2で、東芝竜也と言います。」
「で、私は、竜也と同じ高校の同級生で、近藤明日実と言います。」
「明日実の母の三波です。」
「そして、幸次の父の西田達郎です。あと、三波さんと付き合ってます」
と誰も聞いていないことと言って、明日実の母親と照れくさそうに、見つめ合っている。そこに居た7人が、挨拶を終えて、見えない3泊4日が始まってしまった。
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