愛とは
血だらけの織田達が目の前にいる。
僕と結愛は2人で立ち尽くしていた。
返り血が彼女の顔を赤く染める。
返り血を浴びていても、彼女の顔はとても美しかった。
「どうしたの?何か顔についてる?」
彼女が聞いてきた。
「血が付いてる。拭いた方が良いんじゃない?」
僕はハンカチを差し出した。
彼女は笑って言った。
「君の方が顔真っ赤だよ。」
それを聞いて、つられて僕も笑ってしまった。
傍から見たら異常な光景だろう。
彼女は嬉しそうに言った。
「良かった。私の事、愛斗君だけはちゃんと理解してくれて。」
僕は言った。
「今、結愛は幸せ?」
「うん、幸せだよ。」
そうか、それは良かった。
僕は手に持っていたナイフを彼女に突き刺した。結愛が小さく呻き声をあげながら刺された所を押さえている。
信じられないという顔で結愛は僕を見つめている。
「やっぱり、昔の事を根に持ってるの?」
彼女が小さな声で聞いてきた。
「いや、そんな事ないよ。」
「じゃあ、なんでこんな事するの?私の事、好きじゃないの?」
僕は、満面の笑みで答えた。
「好きだよ。殺してしまいたいほどに。」
それを聞いて、結愛は笑顔のまま目を閉じた。
どうやら、結愛の言う通り、僕達は似ているみたいだ。ただ、苦しんでいる顔を永遠に留めていたいのか、笑顔を永遠に留めていたいのか、それだけの違いだ。
恐らく、僕と結愛はまともに人を愛せては
いないのだろう。だが、正解なんて誰も教えてくれない。
僕達は愛に取り憑かれている。たった1人以外に何も愛せなくなって、それ以外の大切なものを何もかも失ってもなお、幸せだと感じている。
他人はこれを異常だと言うのだろうか、愛ではないと言うのだろうか。思春期を拗らせていると一笑にふされてしまうのだろうか。
もしそんな事を言われるのなら、
僕はそんな事を言う人に問いたい。
愛とは、何なのだろうか。
雨が降ってきた。
このまま何もかも洗い流して欲しいと僕は空を見上げながら思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます