告白

僕と結愛は人気のない原っぱに2人横並びで

座っていた。結愛が言っていた通り、辺りに人は誰もいない。


2人だけの世界だった。


風が彼女の髪をなびかせる。

今日の横顔は、いつにも増して綺麗だ。


静かな時間が、2人の間を流れていった。




僕と結愛が同時に口を開いた。

「あのさ、」


「あ、ごめん。愛斗君先に言っていいよ。」

「いや、結愛の方が先に言ってよ。」


「そっか、分かった。」

結愛が話し始めた。


「波多野さんが遺体で見つかったっていうニュース見た?」

「見たよ。」

「どう思った?」

「どう思ったって、驚いたし、ショックだった。」

「そっか。」

彼女は何かを堪えているように見えた。


だが、こちらを向いた時、それが笑いを堪えていたのだと気づいた。


彼女は言う。

「あのニュースでは、暴力団グループの犯行って言ってたけど、本当は違うの。」














「波多野さんは私が殺したの。」














僕はそれほど驚かなかった。

ただ自分の思い描いていた最悪のパターンが現実に起こってしまった。そう感じた。

僕の目の前にいるのはクラスの中心の美少女ではなく、ただの殺人犯だった。


花火があがった。

彼女の顔が照らされた。その顔はまだ笑顔のままだった。


「あれ、思ったより驚かなかったね。知ってたの?」

「知ってた訳じゃないけど、1つ聞きたい事がある。」

「なに?」



「結愛と僕は、過去に1度出会った事があるよね?」



「そうだね、あるよ。」


彼女は普段と変わらない声で言った。


「どうして気づいたの?」

「元々結愛に出会った時に、懐かしい感じがしてた。確信したのは波多野さんから結愛の両親が離婚してた事を聞いた時に。」


「そっか。もうちょっと早く殺しておいた方が良かったかな。」


少し引きつった顔で彼女は言う。その目は狂気に満ちていた。彼女は続けて聞いてきた。


「どこまで知っているの?」

「ほとんど全て。」

「そっか。」

「どうしてこんな事するの?」

僕は言った。


彼女は僕の目を見て言った。


「愛斗君の事が好きだから。」


「好きだからこんな事をするの?」

「そうだよ。好きな人のためにするの。」

「僕はこんな事望んでない。」

「じゃあさ、」


彼女は真剣な目で言う。

「織田君達が来なくなった時、愛斗君笑ってたよね。望んでなかったら笑顔になんてならないんじゃない?」


「ねぇ。愛斗君は本当は望んでたんじゃないの?嫌な過去を思い出させるような奴らが来なくなることを。」


何も言い返せなかった。

織田達がいなくなった時、僕は確かに心の中で喜んでしまっていた。

だが、だからといって結愛の行動は受け入れられるものではない。


「そうだとしても、君がしてる事は立派な犯罪だよ。」


「うん、そうだね。でも私は続ける。」

「なんで?」


「これが私の愛を証明するものだから。」

「こんなの、愛なんかじゃないだろ。」

「何を言ってるの?」










「愛の形は人それぞれでしょ?」











「私はこれが生き甲斐なの、だから続ける。」


言っている意味が分からなかった。

人を傷つけるのが生き甲斐だなんてイカれている。


「ねぇ、見せたいものがあるんだ。私についてきて欲しい。」


そう言って彼女は僕の手を取り歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る