花火大会当日

花火大会当日になった。


僕は1人待ち合わせより早く集合場所に

着いていた。まだ彼女の姿はない。


正直、昨日の夜は全く寝れなかった。

彼女と一緒に花火を見れる事がとても嬉しくてワクワクしていたのと、モヤモヤとが僕の心の中で織り交ざっていた。





今日は彼女に聞きたい事が沢山あった。

それ以上に、彼女に伝えたい事があった。







「愛斗君。」

後ろから結愛の声がした。


寒気はしなかった。


「ごめん、待った?」

彼女は少し申し訳なさそうに言った。

「いや、今来たところだよ。」

僕は答えた。


彼女は赤い浴衣に身を包んでいた。


浴衣姿の彼女は屋台の提灯よりも遥かに眩しくて、美しかった。


「じゃあ、行こうか。」

彼女が手を差し出してくる。

「う、うん。」

僕も彼女の手を取る。


2人で出店の並んだ道を歩き出す。

2人で歩くのはいつもの事なのに、今日は何故かとても緊張していた。




何店舗か出店を巡っている時に、僕はふとした疑問を結愛に聞いてみた。


「あのさ、今日阪井が来ていないのに、なんで何も言ってこないの?」


「なんだか来ない気がしてたから。」


どうしてそう思ったのか、僕は聞こうと思ったがそれを遮るように彼女が言った。


「ねぇ、そろそろ花火あがるんじゃない?」

「私、凄い綺麗に花火が見れるとこ知ってるんだ、そっちに行かない?」


そう言って、彼女はまた僕の手を引っ張って歩き出した。

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