変わらない運命
あれから2日が経った。
今日はまた文化祭の準備で学校にいた。相変わらず羽田さんはクラスの8人組グループの中心にいる。
だが、今日はなんだか様子がおかしい。しきりに僕の方を見てくる気がする。僕の考えすぎだろうか、なんにせよ早く準備を進めないと、などと思っていると、
「ねぇ、桐嶋君もこっち来て証明してよ。私と桐嶋君は付き合ってないって。」
「…え?」
何でそんな話題が出てきたのか全く分からなかった。
「私達が一緒に帰ってたの織田君が見てたらしいのよ。それで疑ってるみたい。笑」
なるほど、それなら仕方ないか。
しかし迷惑な話だった。
クラスではいつも2人の男子と行動を共にしていて、クラスカーストの最上位に位置する男子だ。
羽田さんとはとても仲が良く、僕たちの関係を疑ったのはそういうところに理由があるのかもしれない。僕はそう思う事にした。
結局、この日は1日織田への釈明で時間が過ぎて行った。その帰り、僕は
今日一緒に準備した男子もいたが、ほとんどは知らない顔だった。
僕は怖気付いた。嫌な予感がする。
「なぁ、なんでお前がここに呼ばれたか分かるか?」
織田が言った。
僕は分からなかった。いや、本当は分かっているが、分からないと思いたかった。だが僕が口にするより早く根津が言った。
「お前なんかがどうして結愛と仲良くしてんだよ。身の程をわきまえろよ。」
やはりそうか。
どこかで聞き覚えのあるフレーズだと思った。
身の程が違う事は分かっていた、僕なんかが彼女の隣にいるのは不釣り合いだと何度も思った。でも僕はそれ以上に今の自分を変えたかった。過去の事をいつまでも引きずっていたくなかった。
「そんなの関係ないだろ。」
僕は言った。
次の瞬間、僕の視界が揺らいだ。何度も何度も揺らいだ。赤い液体が辺りに飛び散る。
僕の脳裏にまた忘れかけていた過去がフラッシュバックした。
それでも、僕は負けたくなかった。
「僕が誰と一緒に居ようが僕の勝手だろ。」
絞り出した声で言った。
その時、彼らの顔が嘲笑に転じた。
「は?お前何言ってんだよ。」
「結愛が一緒に居たくないって言ってんだよ。」
僕は頭が真っ白になった。
まさか、彼女がそんな事を言ったのか。
僕はただ呆然と立ち尽くした。
彼らの攻撃が再び始まった。
僕は何も反撃出来なかった。
時が止まっているように感じる。どうして僕だけがこんな目に遭わなければならないのだろう。そう思うと涙で余計視界が揺らぐ。やはり僕はこんな運命なのだろうか、どこへ行ってもずっとこうなるのだろうか。
その時、狭まった視界に眩しい何かが入ってくるのに気がついた。
「ちょっと、桐嶋君に何してるの。」
聞き馴染みのある羽田さんの声だ。そう思うと、僕の意識は急激に遠のいて行った。
花火大会まであと13日。
一度進みだした時計の針は、もう元に戻らない。
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