第3話 私の(仮)友達

最初に拾ったモモは、いつから捨てられたかわからないけど、全身に泥や木の枝などが付いていた。


おそらく今日中ではなく一週間前くらいも放置されていると思う。


一週間も放置されているのに、誰にも保護施設に電話をしないだろう?


それが不思議だった。


その疑問を考えながら、風呂に入る準備をする。


巨大なバケツにお湯を入れて、適度なお湯なのか手を浸して確認する。


「お湯の加減は大丈夫だね。おーい、モモさんおいで」


モモさんを呼ぼうとしたが、モモさんは現れなかった。


どこにいるのか、キョロキョロと探し始めると、カーテンの下にしっぽだけ出ていた。しっぽを見ると、牛のテールのように見えた。


「美味しそう…」


ダラリと口の中からよだれが出てきた。


音を立てないようにゆっくりと足を上げて、モモさんに近づけようとした。


その時、ピンポーンとチャイムを鳴らす音がして、はっと自分を取り戻した。


「あれ?こんな時間けど、誰かな?」


もう深夜3時を回っている。


人が来るのはあんまりいないけど、とりあえず誰なのか?と呟きながら玄関まで歩いて行った。


ドアを開けると、大学で勝手に私の友達と名乗る仮の友達がいた。


仮の友達は、優衣さん。容姿は整えているので、大学でとても人気がある。


モデル集に載せるくらい美人である。しかも勉強も上位で争えるくらい実力がある。勉強と容姿を揃って、完璧な女性だ。


優衣さんの隣にいると、ゴミだと思われるじゃないかと思った。


優衣さんに迷惑をかけて欲しくないので、なるべく距離を置こうとしていた。


しかし、優衣さんから私のところに近づいてくる。


何の企みなのか、優衣さんの意図を全然掴めていない。


優衣さんとしては私のことを友達と思ってくれているが、私はどうしても嬉しくなれなかった。


それは、本当の友達ではなく、ただの遊びで付き合っているだけかもしれない。


身支度も容姿も綺麗に整えていない私と一緒にいると、優衣さんの可愛さが増すだろう。本当は一緒にいたくないけど、優衣さんはしつこく付き纏ってくる。


私はもう呆れていた。


優衣さんがキッパリと諦めるまで塩対応をしようと決めた。


しかし、なぜこんな時間に私の家に来るの?と戸惑いをした。


「優衣さん?どうした…ん?」


優衣さんから何かの酒の匂いがする。


もしかしたら深夜遅くまで酒を飲んでいたかな?


いや、居酒屋は0時まで営業するはずけど?


「ちょっと、遅くまで酒を飲んでた?ったくな。どこで飲んだ?」


優衣さんは真っ赤な顔にヘラヘラと笑いながら


「彼氏の家で酒を飲んでた」


「彼氏の家?そこで泊まればいいじゃない?」


「あ〜それはもう別れた。彼が無理矢理にえっちぃをしようとしてた。私は嫌と拒否したが、彼は止まらなかった。もう嫌と思って、逃げ出してきた」


「…またか…」


そう、優衣さんは素敵なボディを持っている。だから男性の視線は私の顔ではなく、胸の方に向けている。


(最初から胸を選ぶ男性より、性格を重視する男性を選べ)


優衣さんは恋人ができる時間は短いが、別れるのも早い。


いつも別れた時、真っ当に私のところに来て、優衣さんの愚痴に付き合う。


私は愚痴を聞く暇はない。愚痴を適当に聞き流して、提出しなければならないレポートを記入をしていた。


普通なら真面目に聞けと怒鳴れるが、優衣さんは何も怒っていなかった。


いつも最後に「愚痴を聞いてくれてありがと!」と私にお礼を言う。


私は真剣に愚痴を聞いていないのに、優衣さんとしては喜んでいた。


大学入学の当初から優衣さんのこと変な人だねと思いながら、今も友達でも関係で付き合い続けてきた。


「ったくな。家の中に入りな。水でも飲んで」


「ありがとぉ」


ベロベロに酔って、お礼を言いながら私をハグして、頬にキスをした。


「うわっ、酒臭い!ちょっと離れて!」


バグした優衣を引き離した。


踵を返すと、モモさんがおすわりして待っていた。


モモさんは頭を傾けて、ピクピクと耳を動かしていた。


(可愛いー!)


いつまで見つめても飽きないなと、微笑ましくなった。


肩に腕を乗せた優衣さんがいなくなり、モモさんの方に見ると優衣さんが抱きしめた。


モモさんの顔にスリスリとしながら


「カワイィ!!!持って帰りたい〜」


「あ、持って帰っちゃダメだ!」

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