第2話

〇葬儀場・前

 火葬場も備えた大きく綺麗な葬儀場。喪服を着た参拝者たちが訪れており、その中

 には詩月と滝山亜貴(39)の姿がある。

 葬儀場の入り口には「故和田達夫」と書いてある。詩月、脚を止めてその名前を見

 つめる。


詩月「……母さん」


亜貴「なに?」


詩月「簡単に死ぬもんなんだね、人間って」


亜貴「元気そうだったのにね。でも癌を患ってたみたいよ」


詩月「喪主は、誰?」


亜貴「息子さんって聞いてるけど」


詩月「へぇ……生きてたんだな」


   詩月、眉間に皺を寄せながら葬儀場へ入っていく。そのあとに続く亜貴。


〇葬儀場・中

 焼香の順番に並んでいる詩月と亜貴。祭壇をメインに据えて両脇に親族が座ってい

 る。


亜貴「良い顔をしているわね、大家さん」

 

 祭壇に置かれた達夫の遺影は若く、最近撮られたものではない。

 詩月、それを見て訝しんでいる。


詩月「……」


 詩月、焼香してから親族席に座る和田幸隆(41)を冷めた目で見つめる。

 幸隆、沈痛な顔で俯いている。

 亜貴が親族席に頭を下げて去るも、詩月は幸隆を見つめたまま動かない。やがて、 

 詩月の視線に気付く幸隆。詩月、幸隆と目が合うとすぐに逸らして去っていく。


〇葬儀場前

 入り口から出て来る詩月と亜貴。


詩月「先帰っててよ」


亜貴「でもあなた、火葬場へ行くのは親族だけよ」


詩月「わかってる」


亜貴「……気をつけて帰ってきなさい」

   

 亜貴、去って行く。

 詩月、火葬場がある方へ歩き出す。


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