第16話

特別チケットのおかげで誰よりも早く入園できたのだけれども、さてどうしたものか。チケットのことが気になって乗り物どころではない。


「茜さん、チケットの裏には何が書いてあったのか教えてもらえない? 」


「…」


茜さんに尋ねるがやっぱり答えてくれない。仕方がないと思い話題を変えて改めて話しかけようとすると後ろから誰かによび止められる。振り向くと受付の人と同じ制服を着た女性スタッフが手に何かを持ってこちらを向いていた。


「あの、お客様。特別チケットの方ですよね?こちら特別チケットを利用してご入園された方に着けていただいております。是非ご協力お願いします」


女性スタッフが手に持っていたのはピンクと水色の二つの腕輪だった。腕輪というより、よく生徒会がつけているような腕章に近いかもしれない。きっとこれがパスポートの代わりなのだろうと思い腕に着ける。もちろん僕は水色だ。


「カップルのお二人の仲がより深いものになりますように全力でサポートいたしますね」


腕に着けたことを確認すると女性スタッフは最後に爆弾発言をして走ってもと来た道へと帰って行った。


「!!!」


「は?カップル?何を言ってるんだあの人は。茜さんもそう思うよ…茜さんどうした!?」


茜さんはさっきよりもさらに顔を赤くして何かに驚いているようだ。え、いったいどういう意味が隠されているんだ?


「茜さん、大丈夫か?体調悪いなら無理はしない方が…」


「わ、私は元気ですよ!あー、なんだか熱くなってきましたね」


そういいながら服のネック部分をつかんでぱたぱたとさせている。ダメです、その動作。胸に目が…ん、服? 悠馬に服を褒めるのがルールと言われたことを思い出し正直に褒める。


「茜さん、その服に合ってる、か、可愛いと思う、思い…ます」


敬語になってしまった。分からないだろうか、この褒めたいけど褒められない気持ち。きっと男性読者なら分かってもらえるはず。褒められるとは思っていなかったからか、茜さんは顔を赤くして俯いてしまった。しばらく時間が経過して、茜さんが普段の顔の色に戻りいつも通りの明るい笑顔で


 


「あ、ありがとうございます。とてもうれしいです」


というと僕の腕を引いてジェットコースターへ向かうのであった。


 


まって、もう乗り物はだめだよ。


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