第14話
僕の家から遊園地までは電車を利用して大体二時間程度だ。電車に一時間以上も時間を使わなければならないのは中々つらい。なぜなら僕は非常に乗り物に弱いからである。電車に乗る前に食べ物を食べたが最後。その食べたものは悲しいことに消化されずに外の世界へと排出されてしまうだろう。まあ、そんなこと考えながらも今すでに乗ってるんですけどね。隣には茜さんが座っている。なぜ隣に座っているのか、簡単だ。電車は電車でも新幹線だからだ。
「信也君見てください、外明るくなってきましたよ!綺麗ですね!」
テンションの高い茜さんの気分を乗り物酔いなんかで損ねないように力を振り絞って応える。
「そうだね、本当にきれいだ」
「ですよね!信也君と遊園地楽しみです!」
茜さんの楽しみにしているオーラが伝わってくる。僕は今やばそうだ。
「信也君は遊園地に着いたら何に乗りたいですか?」
僕はずっとベンチに座っていたいな。なんて言えない。
「じぇ、ジェットコースターとかかな...」
正解だったのか茜さんの表情がより一層明るくなる。眩しい。
「ですよね!私もジェットコースター乗りたいなって思ってました!コーヒーカップ、メリーゴーランドなんかも乗りたいです!」
ダメだよその組み合わせ。くるくる回りすぎだよ。
「はは、そうだね」
こうして自分の首を絞めるのであった。しかし、ここであることに疑問を覚える。なぜこんなにも茜さんは積極的なのだろうか。オリエンテーションで同じ班になったとはいえここまで好感を持ってもらえるようなことをした覚えはない。「なんでこんなに積極的なの? 」なんて聞いたら一気に嫌われてしまうだろう。気になってもあえて築かないふりをするのがモテるために必要らしい。ここ大事。
「一つだけ聞きたいことがあるんだけどいいかな」
「なんですか? 」
茜さんがこちらを向く。
「今日こうして遊園地に向かっているわけだけど、二人なのか? 」
目的地に着いてから合流、なんていう可能性もある。
「え、もちろん二人ですよ? 」
そうなのか。モテたことない僕からすると、茜さん僕のこと好きなのではないかと思ってしまう。まあ、ないか。
「そっか、ならたくさん楽しめるな」
その後も酔いに耐えながら茜さんと会話をして過ごしていた。しばらくしてから一通メールが届く。差出人を確認する―差出人は悠馬だった。こんな早朝からどうしたのだろうか。メールを確認する。
『Gm. 今ごろ茜さんと二人でデートしてるところか? 』
なんでこいつはそのことを知っているのだろうか。悠馬に返信する。
『Gm.なんでそのこと知ってるんだ?もしかして悠馬が何かしたのか? 』
すぐに既読が付く。
『今朝ランニングしてたらたまたまお二人さんが仲良く駅に向かったのを見かけたから、聞いただけだよ』
なるほど、ていうかあいつ朝早いな。朝っぱらから走ってるのか。やっぱりメロスじゃないか。
『疑ってわるい、それで何か用か? 』
メールを送ってくるからには何かしら用があるはずだ。
『余計なお世話かもしれないけど、服装について褒めてあげるといいぞ。これはモテるためというより女の子へのマナーだ』
なるほど。そんなマナーがあることを知らなかった。言われてみれば確かに服装についてなになにも触れていなかった。こういう小さな気遣いが当たり前のマナーたと思ってできているから悠馬は人から好かれるのだろう。
『分かった、ありがとう。』
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