第12話
「英語科室でだけ解答の正誤を教えてもらえなかったこと」
これ以外に具体的な疑問は思い浮かばない。
「その通り、わざと正解不正解を伝えないでもらっていたんだ。ここまで言うと賢い君たちになら分かるんじゃないかな? 」
なるほど、そういうことか
「つまりこのレクリエーションはある意味出来レースだったということですね」
女子三人は疑問を浮かべた多表情で僕を見つめる。そんな彼女たちを横目に僕は言葉をつなげる。
「生徒の資質を確かめるためにあえて難易度の高い問題で試していた。英語科室で正誤を言わなかったのは、一番問題を解くことのできたグループに断られた時の言い訳のネタにするためということでしょうか」
簡単に言うと保険を掛けていたということだ。校長先生からの問題は飾りのようなものだ。もし断ったら他の生徒には『英語の問題が不正解』『校長の問題が不正解』と二点も減らすことができる。役員をやってくれる班にその二つの問題が解けていることにすれば二点プラスされる。だから優勝できなくなるということなのだろう。
「さすが、その通りだよ。私は質の高い高校をつくりたいと考えていてね、レクリエーションという形で試していた。そして資質の高い生徒が君たちだったというわけだよ。どうだい、やってくれるかい?」
僕たちは視線を合わせる。
「僕たちが生徒会をやるメリットは何かありますか? 」
これは当然の質問のはずだ。校長先生の自己満足に付き合うだけとは考えづらい。
「もちろんあるよ。君たちが三年生の進路の時に苦労しなくて済むだろう。それとやってくれるというのであれば半年に一度計六回だけれど有名遊園地の特別チケットをあげるつもりだよ」
確かに進学に困らないのであれば魅力的な提案だ。条件はありそうだけど。
「君たちに限ってないと思うが、成績不良であったり学校生活の態度が著しく悪い場合、最悪退学してもらうことになる」
停学ではなく退学にするあたり本気なのが分かる。僕は生徒会役員になりたいとおもところだけれど僕の意志だけで決めることはできない。三人の意見も聞かないと。
「みんなはどうする?僕はやりたい。だけど、みんながやりたくないのであれば反対はしない」
「私は進学に有利になるのであればやりたいわ」
「あたしもー!生徒会役員になれるのってなんかすごいし」
彩花と萌々は賛成のようだ。あとは茜さんの意見によって決まる。
「遊園地のチケットって、4人全員分なのでしょうか?」
彩花さんはもじもじとしながら校長先生に尋ねる。校長先生はにこやかにほほ笑むと
「もちろん、全員分だよ」
その返事を聞いて茜さんは、まるで太陽のように輝く笑顔で
「私も生徒会役員になりたいです」
そう答えた。こうして僕たちは来年の生徒会役員になったのである。
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