第9話

「第一問       野球のルールにおいて選手の人数は9対9である ○か×」


「簡単ね。もちろん○よ…はあっ!」


萌々が全力で打つ。ちょうど○の中心に当てている。すごいなあいつ、一問にそんなに全力で打つ必要はないと思うが。


「第二問       バスケにおいて ゴールから一番遠い場所からのシュートがうまい人、のポジションとして向いているのはPG(ポイントガード)である ○か×」


「馬鹿にしてるの?もちろん×よ…せいっ!」


すごいな。これなら萌々に任せていても問題なさそうだ。


「萌々って運動神経だけじゃなくてスポーツの知識もすごいんだな」


「も、も? 」


茜さんがよくわからない反応をしている。何か変なこと言ってしまっただろうか。少し寂しそうな表情に変わり何かを小声でつぶやく。


「(班作ってこんな短い時間で呼び捨てなんて萌々ちゃんはうらやましいです…)」


「何か言ったか?」


「い、いいえ、何も言ってませんよ!」


「そ、そうか」


なんで俺まで動揺してるんだ?こんなに突然態度変わられちゃうと非モテの僕は焦ってしまう。読者のみんなも分かってくれるだろうか。普通に会話していた女の子の態度が突然変わって動揺したことはないだろうか。うん、ないな。


「ももちゃんは中学3年生の時テニスの全国大会優勝したそうです」


だからあそこまできれいに打てるのか。それなら納得できる。


「テニス以外のスポーツまで詳しいし、きっと萌々にスポーツをやらせたら右に出る奴はいないな」


「(ま、また呼び捨て…)」


「どうした?大丈夫か? 」


さっきから明らかに茜さんの様子がおかしい。気になるけど何度聞いても「気のせいです!」とか「何も言ってないです!」しか答えてくれない。『しつこい男はモテない』って悠馬が言ってたのを思い出した。これ以上は何も聞かないでおこう。


「あの、信也君。私のことを―」


 


ピーーー!


 


笛の音が体育館中に響き渡る。試験が終わったようだ。


「茜さんごめん。笛の音で聞こえなかったんだけどなんて言おうとしたんだ? 」


「何でもないです、忘れてください!」


茜さんは顔を真っ赤にさせながら走って行ってしまった。何を言いたかったんだろうか?


そんなことを考えていると萌々がダッシュでこっちに駆けてくる。


「変態、あたしのプレーどうだった?すごかったでしょ? 」


おお、すごくいい笑顔だ。写真に収めておきたいと思ったが気持ち悪いと思われてしまいたくないのでやらなかった。朝の萌々の態度と違いすぎないか。


「ああ、すごかったよ。あまりの美しさに見とれてしまった」


「は?調子に乗らないで。キモ。どうせ胸とか脚見てたんでしょ変態」


やらかした。そういうつもりで言ったわけではないのだけども、今否定しても無駄だろう。


「と、とにかく。お疲れ様」


「ふんっ」


どうやら怒らせてしまったようだ。萌々の許容範囲がわからない。機嫌を取ろうとしていたらそのタイミングで茜さんがトコトコと歩いて帰ってきた。


「今回のチームは20問中19問正解で合格基準の14問以上を上回るため、試験は合格とする」


19問!?すご過ぎじゃないか?制限時間は二分しかないはずだ。


「まあ、当然の結果でしょ」


「いやいや、十分にすごいよ。本当に体育得意だったんだな」


「だから言ったじゃん、あたししかいなくない?って。まあ、合格したことはわかったし次行こう 」


時間が縛られていた分、かなりの時間を使ってしまった。急がないと校長室にまでたどり着けなくなってしまう。


「そうしよう」


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