第3話

〇マンション・外観(夜)

 鉄筋コンクリート三階建て。


〇同・尚也の部屋(夜)

 楽譜に向かい、トランペットを吹いている尚也。吹いているのは彩美に最後に聞か 

 せた曲。時折、楽器を置いて楽譜に音符を書き込んでいく。


尚也「やっと出来た」


 尚也、手書きで書いた楽譜をまとめながら椅子に座る。


尚也「タイトルは……面倒くさいな、彩美に考えてもらおっと」

   

 尚也、スマホを取り出し、電話帳から瀬川彩美を選ぶ。彩美の顔写真入りの画面、

 電話をかけようとした尚也の指が止まる。


尚也「あ……そっか、もう」

   

 尚也、写真うつりがあまり良くないぎこちない笑顔の彩美の写真を見つめる。


〇(回想)河原

 一人、トランペットを吹いている尚也。そこへやってくる彩美。


彩美「素敵な曲ですね」


 尚也、彩美を見る。


彩美「タイトルは、なんていうんですか?」


尚也「ないよ。今考えたオリジナルだから」


彩美「そうですか。それじゃあ」


 彩美、嬉しそうに


彩美「私しか、知らない曲なんですね」


〇元の尚也の部屋(夜)

  

 彩美の写真がうつる画面を見つめ、涙を流している尚也。


尚也「あれ? なんだこれ」


 尚也、涙を拭くが涙はまた流れる。


尚也「……おかしいな」


 尚也、次第に拭くのをやめて嗚咽が漏れ始める。


尚也「おかしいな」

 

 スマホを落とし、俯く尚也。


〇同

 電気の点いてない室内。テーブルの電灯のみで、物書きしている尚也。やがてペンを置く。


尚也「……ベタかなぁ」

   

 尚也、苦笑して立ち上がり部屋を出て行く。

 テーブルの上には楽譜の束、タイトル欄には「彩り」と書いてある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彩り(短編) KH @haruhira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ