第2話

〇渋谷・スクランブル交差点・外観

 信号が青に変わり、横断歩道はあっという間に人で埋め尽くされていく。


〇喫茶店

 二階の窓側のテーブル席でスクランブル交差点を眺めている尚也。

 その向かいには木谷恭太(18)が座っている。


尚也「うわぁ……何度見ても慣れないよ、この人の多さ。こんなに人間いて地球ってだめにならないのかね。そう思わない?」

  

 恭太、俯いている。


尚也「恭太?」

 

 恭太、身を乗り出して


恭太「それで別れたのかっ! 瀬川彩美と!」


尚也「うん。だから今話した通りに」


恭太「わからない。わからないわからない。三年の超絶イケメントランペッターと二年の超絶大和撫子。子どもの名前はなんだろうね、なんて考える会が出来たほどのベストカップルが、なぜ……」


尚也「まぁ男女なんてそんなもんでしょ」


恭太「いやいや。話聞いてる限り、彩美ちゃんお前のこと好きじゃん。お前だってそうだろ」


尚也「うーん。まぁ好きだけど、物理的な距離がさ」


恭太「254キロくらいなんだよっ! そのくらいで愛は負けるっていうのかっ! 俺は悲しい。名前考えてたのに……」


尚也「恭太、考える会に入ってたんだね」


   恭太、水を飲んで息をつく。


恭太「後悔してないのか?」


尚也「してない。実際問題さ、音楽に集中したいっていうのはあるんだよ。まだ一ヶ月くらいだけど、上手いやつは沢山いるってわかったし。恭太が大学こっちで助かったわ。ひとりぼっちは寂しいから」


恭太「大抵、一人でいた奴が何言ってんだか」


尚也「そうだったっけ」


恭太「あれから連絡くらいは?」


尚也「いや、まったく」


恭太「SNSやる子じゃないもんなぁ、近況もわからんか」


尚也「案外、入学してきた新一年生の彼氏が出来たかもしれない」


 尚也、楽しそうにコーヒーを飲む。

 恭太、それを訝しげに見つめて


恭太「まぁお互い納得してるならそれでいいけどさ」


尚也「恭太は自分の心配したら? ずっとモテないままはダサいよ」


恭太「うるさいな」


 笑い合う、尚也と恭太。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る