ストレスフリーダム!

藤宮美琴

1話 過去に戻る

(こんのっ、クソやろーがっ!!)

枕に対して腕を大きく振りかぶる。


少し時は遡る。

家に帰ってきた私は学校の課題を終わらせて夜ご飯を食べ、お風呂に入りネットを見ながらゴロゴロしていた。

(もうこんな時間か。)

時計の針は深夜0時を指していた。

寝ようと布団に入り電気を消す。

しかし結果として私は眠れなかった。

なぜなら公道を非常にうるさく走り回るゴミのような暴走族に眠りにつくのを妨害されたからである。

(これでは眠れやしない。仕方ないのでお酒でも飲むか。)

明日は土曜日で休みだったので、幸いお酒を飲んでも問題なかった。

そう考えて冷蔵庫へ向かった。

ここで一つ問題が起きた。

お酒がなかったのである。

(はぁ、仕方ない。買いに行くか。)

口の中はすっかりお酒気分だったので、近くのコンビニに買いに行こうとコートを羽織って外に出る。

鍵を閉めて階段を降りていく。

アパートは三階なので、エレベーターはない。

コンビニに向かう途中に、前から酔っ払いが歩いてきた。

「おい。おまえ何俺を見てんだぁ?あぁん?俺がそんなにみすぼらしいってか。ふざけんなよぉ、クソが!若いくせに調子に乗りやがって。俺なんかなぁ、俺なんかなぁ。」

酒臭いし、言っていることは支離滅裂。そもそも私はあなたを見ていない。

典型的な酔っ払いに絡まれた。

最悪だ。

なぜここまで酔うことができるのか。

泥酔が周りにどれだけ迷惑か知らないのか。

それはそうとまともに相手をしても意味がない。

素早く逃げることにした。

後ろから吐くいている声が聞こえる。

少しアクシデントはあったが、コンビニに着いた。

店内は深夜相応にすいている。

どうせならついでにおつまみも欲しいなと思いながら店内を回り、お気に入りの缶ビールとチータラをかごに入れた。

そしてレジに向かった。

帰り道、今度は警察に遭遇した。

「ちょっといいかな?」

警官のうち中年くらいほうが話しかけてきた。

(よくない。寒いし早く帰りたい。何よりめんどくさい。)

「はい。いいですけど。」

「こんな夜遅くになにをしているのかな?」

(見てわかんないなら警察辞めちまえ。)

「買い物です。」

「そうなんだ。ところで身分を証明できるものとかある?」

(さっきからなんでこいつため口なんだよ。協力して欲しいならもっとへりくだれ。)

「あぁ、はい。運転免許証ならありますけど。」

中年警官が私の手から無造作にとる。

「何買ったの?中身みして。」

運転免許証を返しながら中年警官が高圧的にそう聞いてきた。

(まず礼を言え、礼を。そして大切に扱えよ、人のものなんだから。)

「ええ、いいですけど。」

袋を若い警官に渡した。

「チッ」

中年警官の方から舌打ちが聞こえた。

(だからおまえに渡さなかったんだよ。ゴミが。)

「ありがとうございます。そうですね。別に危険なものは入っていません。」

袋の中を青年警官が確認しながら言った。

(おお。こっちはまともでよかった。両方あれだったら目も当てられない。警察を信用しなくなるとこだった。)

そして礼を述べながら私に袋を返そうとしたそのとき横から手が伸びてきた。

「ふんっ。おまえはまだまだ未熟だからな。俺がもう一度見てやる。」

中年警官はそう言いながら袋をとり、中を確認し始めた。

雑に扱っていて缶も何度も上下に振られて蓋を見たり底を確認したりしている。

(クソが。さっきの腹いせに絶対わざとやってるだろ。)

そして何も言わず袋を突き返してきた。

「紛らわしいことするんじゃねーよ。」

去り際そうつぶやいているのが聞こえた。


家に帰ってまっすぐ寝室に行き枕を殴りつけようと拳を振り上げた。

その瞬間体は謎の光に覆われた。

そして私はあまりのまぶしさに目をつむった。

そのさなか懐かしいと思える声でささやかれた。

「我慢して口に出さないからそうなったんだ。次はもっと声にだして生きろよ。」

(は?何を言っているんだ。というか日本語少しおかしくないか。)

疑問を感じた少し後、強い光はおさまった。

何だったんだ、そう思いながら目を開ける。

目には実家にある自分の部屋が映っていた。

「あれ、いつの間に私は自分の部屋に?」

自分の声に違和感を覚える。

少しだけ高い声はまるで幼い子供のようだった。

肩が軽い。

下を向くと私の胸は消失していた。

「子供の頃の部屋の記憶は曖昧だ。けれどそれに似ている。いや。そもそも大学への入学を機に引っ越した。そのとき部屋も整理した。こんなにものも多くないはず。明らかにおかしい。」

ガチャリと部屋の扉が開く。

「忍{しのぶ}、おはよう。もうじき準備しないと小学校に送れるよ。」

扉から顔を出したのは父親だった。

記憶よりもずいぶん若く、一瞬本当に父親なのかを疑った。

「小学校?」

「寝ぼけているのか。昨日で春休みは終わりだよ。早く顔を洗って朝ご飯を食べちゃいなさい。お母さんもまっているよ。お父さんは今から仕事だから、行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

父は部屋から出て行った。

「つい反射的に返してしまった。反抗期もなかったから、15年間ほぼ毎日やっていたやりとり。大学生になってからは、やってないからずいぶんと懐かしく感じるなぁ。さてとりあえず状況把握をしよう。カレンダーは、っと。あった。」

そこには2009年4月6日と書いてあった。

「えっと、私が2021年から来たから12年前か。月日は同じと。大学二年生になるところだったのだから今は小学三年生と言うことだろう。」

「忍、ご飯よ。」

またもや私の部屋に来客である。

「おお、若い。」

母は嬉しそうににしながらいった。

「もう、何を言ってるの。本当に遅刻しちゃうわよ。ふふっ。」

「はーい。」

とりあえず服を着替えて学校の準備をすることにした。



















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