発明品
ぽつねんの竜
発明品
A氏は市街地より離れた丘に研究所を兼ねた自宅に住み、そこで研究に没頭していた。
A氏には、長年交際しているC子という女性がいた。
お互いが互いを信頼し合い、何不自由無く生活している。
「ついにやったのだ。完成するまでに長い時間を費やしてしまった。これで世界中の夫婦も交際中の二人も別れを知らずに済む。」
A氏は長い研究の末に、一つの大きな装置を発明した。
人が一人入れるほどの大きなカプセルを3つ作り、それを作動させる為のボタンを作った。
カプセルは3つそれぞれ等間隔に横にならべ、隣同士には太い管で繋がれ、真ん中に設置したカプセルはボタンとも繋がれている。
二階にいるC子を急いで呼んだ。
「これがあの機械なの?」
「ああ。これで僕と君は一つになれる。何をしていてもどこに行っても一緒だ。」
A氏が発明したのは、両端に設置した2つのカプセルに物質を入れると、真ん中のカプセルから一つの物質として再構築させる機械を作ったのだ。
「良かった。あの日話してたことが実現したのね。」
「待たせてごめんね。」
A氏はボタンをいくつか動かし、それからふたりはそれぞれ両端のカプセルに入った。
数十秒後、カプセル内は二度三度大きな光に包まれた。
空になっているはずの真ん中のカプセルからC子の姿は無くA氏が出て来た。
「C子聞こえるか?」
居ないはずのC子に声をかける。
「聞こえるわ。」
「本当か。これで成功だ。」
C子の声は耳からというより体の内側から聞こえて来るようだった。
「ええ。これで私たちはひとつだ。」
なんと、C子の体はA氏の体と一つになったのだ。
意識のみが存在していて外側はA氏だが、内側にはA氏とC子が存在しているという具合だ。
「本当に成功したんだな。」
「ええ。」
それからしばらく、A氏の発明を二人で讃えたかが、C子はある事に気付いた。
「これっていつかは元に戻るのよね?」
「そんな事はない。死ぬ時も一緒だ。」
「でも、それだともうあなたの顔は見れないのね。」
「鏡があるじゃないか。」
「それじゃ見つめれないわ。それに手を繋ぐ事もできないし、旅行に行っても二人の写真を撮れないわ。」
「・・・そうだな。」
「そんなのいやだ。おいしいケーキを分け合ったり、寝顔を見て今日は良い日だなって思ったり、抱き合ったり、慰め合うことも出来ないなんてそんなの嫌だ。」
C子の訴えにA氏はとんでもない機械を作ってしまったと酷く後悔した。
A氏は自らの発明品をその手で壊した。
それからA子とC子は死ぬまで一つだったが、生きている間も死んでいるようだった。
発明品 ぽつねんの竜 @tara3po
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