第3話 コミュ障


「暑いのは嫌だな …。」


そう思いながらゆっくりと体を起こす。


三十分ほどで身支度を終わらせ、


「行ってきます。」


と家を出る。


学校に着き、下駄箱に向かうと


靴をしまう哀川さんがいた。



「おはよう鶴ヶ谷君。」


「 …はい。」


僕は慣れない会話にもたつき、


靴を落としてしまう。


それに気付いたのか、


僕よりもはやく落ちた靴を手に取る。


「あ、落ちたよ!って、ねぇ鶴ヶ谷君?」


「…あ、ありがとうございます。」


「ちょ、ちょっと。なんで私と距離をとるの?」


僕がただコミュ障だからという理由だけではない。


俯きながら僕は応える。


「少し事情があって。哀川さんに悪気があってこうしている訳では無いんだ …。ごめん。」


「そっか …。その話、詳しくお願いできるかな。」


「分かりました。」


僕は全てを明かした。


誰もが気づいているであろう虐めのことも。


それによって人が苦手になったことも。


「そうだったんだね …。」


説明しているうちに教室に着いた。


階段下から既に僕らが話しているのを


見た人がいるのだろうか。


例の二人が周りとざわついているようだ。


大した話ではない。悪口など軽い方だ。



しかし、改善の仕様がない生活に


病んでしまった僕は、


学校に行くことが少なくなった。


今ではほとんど行っていない。

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