第2話 雨雲


「今日、みんなで海に行くんだけど一緒にどう?」


この子は珍しいことをするな。


そう思いながら


1つしかない答えを彼女に伝える。


「 …大丈夫。遠慮しとく。」


「で、でもたまには …ってあ、ちょっと!」


僕は視線を逸らして彼女の横を通る。


彼女が僕に話しかけているのが


よっぽど珍しかったのか、

周りが妙にざわついている。


それを横目に僕は廊下を歩き図書室で時間を潰す。


時計が四時を指すと同時にキーンコーンと


チャイムが鳴り響く。



いつものように誰よりも早く学校を出て


駅に向かう。この暑さにはラムネが必須である。


食べる方かって?いや違う、


よく夏祭りで飲まれるあれである。


僕はラムネを片手に電車で待つ。


「あ …さっきぶりだね。」


「どうも …。」


なぜこんな時に。


普段はクラスメイトなんか似合わない時間なのに。


僕は慌てて反対側を向く。


気まずい空気が流れる中、


一人の少女が近ずいていく。


哀川さんよりも少し小柄である。


部活関係だろうか。


仲良さそうに話しているのが聞こえる。


少しした後、僕は一秒でも


はやくいなくなりたいと思う出来事が起きる。


「お!哀川と後輩ちゃんじゃん〜!

…って、なんであいつが近くにいるんだよ。」


毎日懲りなく僕に虐めをして


笑っているうちの一人である。


僕は一本といわず、二本遅い電車に


乗ることを決め、その場を後にする。



明るい五時の空の下を通り、


僕はひとり家に向かう。


「今日は最悪だった …。」


気持ちは雨雲のような隙間の無い空を


無理やり見せられているような。


そんな気分だった。


あっという間に家に着き、


気持ちの整理をする暇もなく、


僕は眠りについた。



翌日、アラームと共に朝を迎える。


締め切ったカーテンを開けると


僕の気分とは裏腹に、今日も日差しが照っている。


「暑いのは嫌だな …。」


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