君といたら花火が観える気がする。

mel mel

第1話 一人の少女


夏の風物詩である「花火」。


僕はまだみたことがない。


また息苦しい日々が


この僕を迎え入れるのだろう。




暑く輝く日差しが照っている。


風のない朝を進む僕は


氷が溶けるような表情をして校舎を抜ける。


「あぁ、またか …。」


僕は教室に入り毎日同じ光景を目にする。


机に無理やり詰め込まれたぐしゃぐしゃの紙たちを


早々と片付ける。


「毎日、よく懲りないよね笑」


「捨ててくれるよね、ありがたい笑」


と、教室の端から次々に聞こえてくる。


聞こえてないとでも思っているのだろうか。


前者に関しては一言一句返してやろうか。


そんなことを考えながら一日が始まる。


「高梨 端乃さん」


「はい。」


「鶴ヶ谷琉心君」


「 …はい。」


僕は自分の名前が嫌いだ。


親が決めたと言っても、


それに見合わない容姿だからだ。


だからといって変わる気はない。


少しの変化にも気づく彼らは


きっと僕を嘲笑うだろう。


机と向かいあわせの日々の中、


一人の少女が近ずいてきた。


「今日、みんなで海に行くんだけど一緒にどう?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る