第16話ヤエ復活

 すっかり忘れてた女神様が御立腹だ。

「ちゃんと言えたの?」

「あぁアタシの正直な気持ちを、伝えたつもり、ヒエ? 八神さんは本当に?」

「ちゃんと溶け込んでる。アイツ意外と女泣かせよね? 京子!」

「私ですか!? それは……あの時は泣きましたよ……怒りで……あれだけ生きるって言ってたのに……」

「あーっもうやめやめ! 辛気臭い! もうこの話は終了! 帰ろうキョーコ!!」

駐車場迄引っ張る。

 するとやはりと言うかヒエが付いてくる。

「ちょっとヒエ一緒に来る気?」

「だってヤエも解放して貰わないと!」

「聞いてたでしょ! もう帰るの!」

「駄目よ! 私達は二人で一人なの! 私の力だけでは五泉の方まで清浄化出来ないのよ」

「そう言われてもなぁ……女神様は分からないかもだけど夜は今危険なんだよ」

「だったら尚更よ! ねぇお願い」

なぜだろう断れる気がしない、師匠の影響だろうか……

「わかったわよ! 八幡神社で良いんだよな?」

「呪物は私が感知して教えて上げるから」

ヒエの身体が宙に浮く

「ついてきなさいよ!」

しょうがないもう一働きと行くか、キョーコと念話で確認する。

「大丈夫? キョーコ行ける?」

「それは私の台詞よ、あれだけ泣いていたくせにね?」

「もう吹っ切れた、師匠は生きてくれって言ってたから。これが終わったら、アタシはやりたい事をやって好きな生き方を探すよ!」

「へぇ~良いじゃない、さっヒエ様が待ってるわ。急ぎましょう!」

キョーコを後ろに乗せてヒエを追う、日枝神社を後にして五泉へと向かう。そう言えばアタシは、ヒエと繋がってるってさっき言われたよな……それって

「そうなるわね、大丈夫そんなに野暮な真似はしないわよ?」

「やっぱり、アンタ嫌いだ!」

やっぱり見透かされている、クッソやりにくい! ヒエと悪態を付き合いながら走っていると。

「ちょっと止まって! 変な気配がする」

「気配? キョーコ何か感じる?」

「私には何も……」

五泉と村松の中間地点の辺で、ヒエがあたりの様子をうかがっている。神妙な顔をしている、まぁ神様だから? 人より敏感なのだろう。オッサンが居てくれればなぁ……

「駄目ね……ヤエが得意なんだけど、先を急ぐわよ!」

急かすように走らされる。そろそろ幽鬼共のの時間が近い。八幡神社の駐車場にバイクを停めて様子を確かめる。辺に幽鬼の気配がない、ヒエが先頭に立ち神社周辺を回る。ほらきた幽鬼共だ、キョーコは真三角剣と三角剣を用意する。アタシは腕輪に霊気を込める。

「二人共安心して」

ヒエがそう言うと神気を解放した、指をポキポキ鳴らしている。コイツまさか……

「私達を閉じ込めた事を後悔させてやるわ!!」

いやコイツらは三下程度で、男は殺し女は犯す以外に自分達が何してるのかわからないのに……

「面倒くさいわね!! だったらこのド三下共には慈悲は要らないわね!!」

「良くも私達が納める土地で好き勝手してくれたわね!! 周囲の三下共纏めて消し去って上げるわよ!!」

ヒエが怒りを燃やし神気で嵐を起こした、周囲一帯に神気が暴風となっている。幽鬼共が逃げ惑っている、アイツラが逃げ出すって。すごい……全部やってくれないかなぁ……ヒエのテンションがおかしくなって来た

「逃がすわけ無いでしょうが! さっさと霧散しなさいな。あっははははっ! 神に手を出した事を……いたい!」

グーで殴って正気に戻す、本来の目的を見失う所だった。

「あのね茉希? 私は神よ! 目的を忘れるわけ無いじゃない!」

「だったら呪物を探ってよ! 今日は走り回って疲れてるんだよ!」

「わかったわよ……でも殴る時はちゃんと言ってね……もうあんな俗物、ここら一帯には近寄れない様にしたから」

だから女神様を封印したって事か……ヒエの案内により呪物を探したが。市街地と言う事もあり全て探し出すのに時間がかかりすぎた。全部で五つかヒエの所と一緒だ、アタシが全て叩きつけて壊した。さて問題は……

「ヒエが起こした方が良いんじゃない?」

「そうしたいけど茉希がやって、人為的に行われたモノはヒトでしか出来ないのよ」

「じゃあヒエの大事な彼女を起こすとしますか!!」

「神気ならいくらでも使いなさい! 許可するわよ」

それをやるとアタシが反動で動けなくなるの知ってるのか……まぁ良いや。女神様を復活させれば幽鬼共は逃げ出し。アタシらはもう戦闘は無いだろう、神気と霊気を槍に纏わせる。あっちょっと! ヒエそんなに神気要らないから寄こさないで……気持ちは分かるせっかちだなもう!!

「あっできればやs……」

もう遅い既に叩きつけたわよ! そしてアタシは、ヒエがよこした神気を使った反動で倒れていた。

「ちょっと!?」

地響きが聞こえる。

「いったああああああい!?」

周囲に神気が溢れ出す、どうやら起きたらしい。ヤエの姿を確認してヒエが飛び付く

「ヤエ! 大丈夫?」

「いたた……ちょっと今の起こし方酷くない?」

ヒエとキョーコがアタシを指差す

「この娘がやりました」

「ちょっとアンタ!」

ヤエが向かってくるがヒエが止めた。おもむろにオデコを合わせて何かを呟いている。

 ヤエがアタシをじっと見つめると、オデコを合わせてきた。

「だいたい分かったわ、起こしてくれてありがとう」

次にキョーコのオデコに合わせた

「京子、辛い思いさせちゃったね。ヒエ! まず私達のお役目を!!」

「わかってる」

二人の女神が手を繋ぎ目を閉じ手をかざす、街中……いや、この市全体を覆い尽くさんばかりに神気が満たされていくようだった。境内の中の空気が変わって行くのを肌で感じる。やっぱり本物って凄い!キョーコが駆け寄って来て起こしてくれる

「これでもう低級な幽鬼は出て来ないだろうね、流石神様だね!」

「本当に凄いわね。今の私にもわかるもの、土地が……市が浄化されていくのを……」

 女神が蒼く光る目を開け伝えてきた

「今回の事件は人の犯した業によるもの、故に人でなければ祓えません。良いですか? 二人共、前回の様に私達は介入できないのです。故に託しますどうかその手で救って下さい」

「おいおいどうしたの女神様? 急に態度変わってるけど。要はアタシらでぶっ飛ばすって事で良いのかい?」

「茉希……貴女には力が備わっていますね? 三つも」

「あっああ……あるけどさ」

何か凄い厳かな雰囲気に辺りが満たされていた。

「呪力は怖いですか?」

「いや……もう怖くない……大事な人をこの手で守ると決めた時に受け入れた」

キョーコの手を握り続けた

「力ってのは……アタシが言うのも何だけど……力を使う人によると思う。守りたいものが在るなら……その為なら神気だろうが霊気をも使う」

「そこに呪力だとか関係ない……守れるなら……『命』以外全てを使い守り抜く!! アタシは死なない!」

「では、私達の前に来なさい一人で」

キョーコに槍と鞄を預けて、よろよろと近づく。

「来ましたよ女神様、結構立ってるのもしんどいんですけど? っ!?」

女神様達の手がアタシの胸を貫く

「今こそ全てを一つに、より濃い光と影を持ちし娘よ選びなさい……魂の力を……」

そんなの決まってる、さっきも言った

「悪いね女神様アタシは、小心者でね用心深いんだ……何度も言わせんなよ……この力全てだ! 光だぁ?影だぁ? 知るか!」

「グダグダうっさいんだよ!! このボンクラ女神!!」

思いっきり女神様達の頬を呪力で満たした手でビンタしてやった。


「「何てことすんのよ!!」」


厳かな雰囲気が消えた。

「だ〜か〜らアタシには! 力があるなら成すべきことがあるんだろ! やらなきゃいけない相手が居て力が必要なら全部だ!」

「いや……だから三つも力があると貴女……最悪……」

「死ぬってか!? 世の中には臨機応変って言葉があるんだよ! 相手の属性も分からないのに、ハイそうですかって決められるか!!」

「全てが終わったらアタシの力を取り上げてくれて良い、それまで現状維持だ! ハイ! 終了! 解散!!」

「行こうキョーコ! 師匠との約束は果たした女神様を起こせってね……」

「でっでもヒエ様とヤエ様がボーゼンとしてるんだけど……」

「あ〜んもう何なの!?」

「いやだから……茉希が健のように……ならない様に……ひっひぐ……うっうぇ……」

嘘でしょこの女神様まさか、師匠の事引きずってた?

「何よ! 悪いっての!? あの時どれだけ自分達が健任せにして後悔したか!!」

「茉希の事を想う人だって居るじゃない! 神だなんて言っても無力なのよ。結局見守る事しかできない! あの時のように……」

泣きながら捲し立てられた。胸が痛い……原因はアタシだった筈だ、何故女神達はここまで……

「もう茉希だけの命じゃ無いって事よ……健が残していった大切な命よ……もう無駄にさせたくない」

あ〜そうだ……師匠アタシの為にいや『呪い』を消滅させるために、女神達の前でお腹に三角剣を突き刺し人を捨てたんだった。女神様にもトラウマってあるのかな?

 二人の女神を抱き寄せてアタシは

「ありがとう気を使わせたね、悪いとは思っている。でもさ……泣くなよ俺は後悔していない」

「そうなる運命だったんだよ。俺は受け入れただけ、充分満足した。一人の女の子を助けれたんだよ凄くないか?」

「泣くより褒めてくれよな!! ヒエ! ヤエ! そして茉希ちゃんに力を貸してくれ、それとありがとう。また時間をくれてお前等ともちゃんとお別れして無かったよな?」

「ついでに塚田さんも、あの時は助かったよありがとう! 茉希ちゃん宜しくね!!」


「えっ!? アタシは今何を!?」

「掴まえたわよ健!!!」

ヒエが私の身体にまた手を突っ込んで引っこ抜く、その手が光っている……まさかまさか!?



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