第15話ヒエ復活
まったく嫌になる、これが有るなんて……これは呪物だ。まだ近くに呪物を感じる、やっぱり誰かが糸を引いている……人間だろう。呪物を叩き壊す!
「キョーコ、これと同じ物が周辺にまだあるみたい」
「分かるの?」
「これには色々な縁があってね……師匠……」
もう五年前の話だ……良し!
「キョーコ片っ端から壊していくよ!! ついて来て!」
「えぇ行きましょう!」
走り出すその先に幽鬼が湧いてくる、コイツら夜の存在の筈だ。もう良い! 考えるのも面倒だ。邪魔するなら穿くまで! ヒュッと後ろから三角剣が数本飛んでいき。幽鬼を串刺しにして斬り裂いた。エグい……振り返ると
「今はその槍、無茶出来ないんでしょ! 任せて!」
「大丈夫だよ!」
走りながら邪魔な幽鬼を腕輪に霊気を込めてぶっ飛ばす!
「アタシの武器は槍だけじゃ無いんだよ!」
「はぁ!?」
「壊れるかも知れない、奪われるかも知れない! だから色々身に付けてるのさ!」
二つ三つと呪物を壊す、まだある! 日枝神社のある山を一周回っちまう。クッソ! 面倒くさい、幽鬼の数が増えてくる。どうする!? 今止まれば更に増える……
「マキ! 私のペースに合わせて」
キョーコと歩調を合わせて走る
「何か妙案でも?」
ポーチから五つ三角剣を飛ばし、アタシたちを囲む様にピラミッド型の結界を張る。結界に幽鬼が触れると幽鬼共が蒸発していく。流石キョーコだ、これなら楽ちんだ。
「疲れない?」
「走る方がキツイわよ! これでゆっくり探せるでしょ」
走るのをやめて歩き出す。
「良くもまぁここまでコントロール出来るね? アタシ苦手でさ」
「そう? もう慣れちゃったのかも知れない。マキとの修練のおかげかもね、さっさと呪物を探し出しましょう!」
再び探し始める。ちなみに幽鬼共は、勝手に結界に突っ込んで勝手に蒸発していた。
残りの二つを見つけ出して破壊する、気が付くと山を一周して戻ってきた事に気付く。
「あ〜しんどい、キョーコありがとね!」
「結構疲れたわ……もう幽鬼消えたわね?」
確かに気配が無い。
「でもさ……」
辺り一帯の呪物を壊したのに何も起きない……
「意味あったのかな? アタシら無駄骨だったらと思うと、こう何か……怒りが」
「ちょっとちょっと落ち着いて!」
キョーコに腕を引かれ社に向かう。近づくと神気が反応する、小さな鼓動の様なものを感じる。
「叩き起こせってか……わかったよ師匠!!」
槍に神気を纏わせる
「マキ!? ちょっと! 起こすなら優しく……」
「言わせねぇよ!! さっさと起きやがれ!! クソったれの女神様よ!!!」
地面に槍を突き刺して神気を地面に叩きつける!
地響きを感じる、もっとも感じてるのはアタシらだけだろう。キョーコがオロオロしている
「だぁーーーーーれーーーよーーーーこの無作法者がぁああ!!!」
空気が一気に変わり神気が溢れて来る。
「良くも私を閉じ込めてくれたわねぇ!!!」
姿を顕現させる、姿を見てチッと舌打ちをするコノ女神!!
「おっお久し振りですヒエ様!!」
キョーコが声をかける
「あら? 京子じゃない! 貴女見ないうちに随分と霊気が高まってるわね」
「きっと京子なのね助けてくれたの!!」
キョーコに抱きついている、イラッっとするので咳払いをする。
「いえヒエ様を助けたのは彼女です」
「あぁあん!! 誰よこの娘! って言うかさっきの一撃あんたなの!? ぶっ飛ばす!」
随分と怒ってらっしゃる、コッチもキレそうだよ。
「ヒッヒエ様落ち着いてください!」
キョーコが抑えている、人間に抑えつけられるなよ女神様。
「あっ暴れないでよく見て下さい彼女を!!」
「何で京子に抑えつけれてるのよ、もう良いわよ!! フンッ」
神気を開放したのだろうキョーコが尻もちをついている。
「名乗りなさいな人間!!」
まだアタシが誰か思いださないか、良いよ見せてあげる……霊気のスイッチを呪力に切り替えて放出する。紅い気を身に纏う
「ちょっとマキ!!」
「引っ込んでてキョーコ」
「随分と強力な呪力じゃない? もしかして私を閉じ込めた人間かしら?」
左手に蒼い気を纏わせて近づいてくる。
「だったらどうだっての?」
右手に紅い気を纏わせて近づく。
「「これでもくらえっ!!」」
女神とクロスカウンターで相打ちになる。
「「グヘっ」」
相打ちで崩れ落ちる
「いってぇ〜」
「神を殴り飛ばす莫迦がどこにいるってのよ」
「ここにいますよ? 今の力とアタシをちゃんと見てくれないかなぁヒエ」
「馴れ馴れしくよばっ……嘘でしょ!?」
「アンタは……アンタ……えっと……ごめん名前忘れたわ、でも思い出した。私が取り憑いてた娘よね」
「そうだよアタシは渡辺茉希。久し振り女神様」
槍を構える
「その力を槍に込めると壊れるわよ?」
「じゃあこれならどう?」
霊気のスイッチを神気に変えて解放する、槍が震えるのを抑える様に握り締める。
「へぇ~っ面白いじゃない? あの時の娘がここ迄とはね……えっ……そこにいたの健……」
「えっ!?」
「通りで見つからない訳よ……茉希って言ったわね、ここまでにしない?」
お互いに手を下ろす
「そうだね、一発で勘弁してやるよ」
「茉希アンタって三つも力が使えるみたいね?」
「まぁね、師匠と修行したしね。呪力は最近操れる様になった」
女神様がじっとアタシを見つめる
「ふぅん師匠って健の事よね?」
「何で分かるんだよ?」
アタシ胸を指差して
「もう消えかかってるけど、茉希の魂に健の魂を感じる」
「まったく抜け目のない男ね、姿をくらませたと思ったら……あの時の涙を返して欲しいわよ」
「どういう事だよ! 師匠は! ヤガミタケシは!?」
「いい? 茉希アンタが持つ神気は、健の神気よ私とヤエで繋がっていたからね。多分……うん繋がってる茉希と私達」
「つまりどういう事よ!」
「五年前、健が神気と呪いを抱えて死んだ。多分その時、茉希アンタの魂に宿ったんでしょうね。魂を融合されちゃ見つけられないわよ」
「心当たり無い? もう消えかけてるわよ?」
「そういえば、いつの間にか自分でもガサツな性格になったような」
「アイツ……悪い部分にまで影響出してるじゃない。どうする? 会いたい? もう健の魂は完全に茉希の魂になるわよ」
躊躇なく答えた
「会えるなら会わせて私と八神さんを! 話したい事が沢山あるの」
「じゃあいってらっしゃい」
ヒエにデコピンされて意識が落ちていく。
気が付くと公園にいた五年前の公園だ、八神さんを探す。
「私です茉希です! 八神さん何処ですか!」
「おじさんならココだよ」
芝生に寝転んでいた、思わず駆け寄って行った。
「八神さん!!」
その胸に飛びつき泣きじゃくる
「おいおい師匠じゃないのかよ」
「もう最後だって聞いたから……私……」
「ごめんな俺の悪い所まで影響させちまった」
「良いのそんなのどうでも良いの……私に……どうして……」
「まぁちょっと心配でね、ごめんな汚すつもりは無かったんだ。どうしても茉希ちゃんが心配でさ……」
「これからきっと嫌な事もあるだろうって、思ってさ少しでも支えたかったんだ。まぁ俺のエゴだ、強く楽しく生きてほしいなってね」
「だから私の魂に?」
「そうだね。結果、危機を察知して茉希ちゃんに修行させたり。辛い思いさせちゃったね」
「八神さん! 私ずっと恨み続けますよ貴方のこと! でも……」
「元気に生きてくれるなら全然オッケーだよ」
八神さんが立ち上がり空を見ている……もう時間なのだろうか……そんなの……
「八神さんもう逝っちゃうの?」
「うん、まぁもう茉希ちゃんの魂となってるからね」
「私……ずっと八神さんが……」
オデコにキスされた
「もう俺は消えるんだ。最後にさ……笑ってよ! 可愛い顔が泣いてちゃ台無しだよ!」
私は一言だけ伝え、微笑む
「愛しています」
もう姿は無かった、伝わっただろうか? 私の思い……胸に手を当てる。
「これからは八神さんの分まで生きます!! ずっとずっと一緒です! だから……だから……」
気が付くとキョーコに膝枕されていた。堰を切ったように涙が溢れる。キョーコが優しく抱き締めてくれる、キョーコの胸の中で泣きじゃくる子供のように。
「もっと違う出会い方をしていたら! 私が呪いを使ったせいで、殺し合ってあの人を殺した! なのに……何で優しくしてくれたの……もう私……私……気が狂いそう! キョーコ……私どうしたら良い? ねぇ!」
「マキ……」
そう言うと、私の頬を平手打ちした。
「もし八神さんが見ていたら、きっとガッカリするでしょうね……」
「キョーコ……私は粋がって強がっているだけの……」
更に平手打ちをされる
「貴女の中に居るんでしょう! 存在が消滅したからって何よ! そんなに弱気な女だって言うの!?」
「あの時の言葉は……私を助けてくれたマキはどうしたのよ! 責任取りなさいよ……」
「ごめんよ……ごめん……でも……今だけは泣かせて」
「マキ……おいで」
暫く泣き続けた、初恋の人を失った……この手で……でも……アタシは生きている……八神さんの分まで生きるって言ったんだ! キョーコの手を握る。
「ありがとうキョーコ! 取り敢えず落ち着いた」
「服をちゃんとクリーニングしてくれるなら許すわよ」
「それとね、さっき平手打ちをしたとき。マキが一瞬八神さんに見えたの……よく平手打ちをしてたかしらね」
「そんなに?」
「結構したわね……全く! ほら立って」
「もういいかしら?」
あぁ忘れてたっ女神様!!
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