第3話

○警察寮公舎(夜)

 四階建て造四階建て。


○同・丸山の部屋(夜)

 六畳の整理整頓された部屋。至る所にぬいぐるみや特撮フィギュアが飾られてい 

 る。そこへ帰ってくる丸山。


丸山「ただいまぁ」


 丸山、疲れたようにベッドに倒れ込む。

 丸山、仰向けになって


丸山「……被疑者確保。っていえばよかった」

   

 丸山、微笑む。

 そこへスマホの着信音。起き上がり、スマホを見る丸山。画面には「母」とある。


丸山「もしもし」


 電話口から丸山公子(52)の声。


公子の声「ようやく出たわ。何度電話したと思ってるの」


丸山「あーごめん。ずっと忙しかったんだよ。今日やっと一段落したんだ。それで母さん、今日僕さ、初めて被疑者を」


公子の声「もうこっちは大変だったのよ。杉田さんが倒れちゃって」


丸山「え? 杉田さんって駐在所の?」


公子の声「過労らしいけど。ちゃんとした精密検査は受けなかったみたい」


丸山「なんで」


公子の声「検査できる病院ってなると本島まで出ないといけないでしょ。駐在所を何日も空けられないって断ったらしいわ」


丸山「……」


公子の声「ねぇ、賢太。あなたこっちに帰ってこれないの? 希望出せば、配属されるんじゃない?」


丸山「それは……うん」


公子の声「刑事なんて危ないでしょ。悪い奴を追い回すんだし。心配でしょうがないのよ。ほら、こっちの駐在所勤務になればそんなに危険なことはないわ」


丸山「……うん」


公子の声「あなたは優しいから。犯人なんて捕まえたことないでしょ」


 沈黙する、丸山。


公子の声「元々そのつもりで警察官になったんだし。そろそろ、考えてみて」


丸山「うん、わかった」


 電話を切る丸山。

 複雑な表情で、腕時計を見つめている。

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僕だけの道標(短編) KH @haruhira

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