第3節




茅並「」


生徒一同「「「」」」


静寂に包まれた2-1の教室。どういうわけか、どことなく風情を感じてしまった。不覚。


省鑼「あ、あの〜・・・。」


徐ろに挙手する投堂さん。割と度胸が要る行為だぞ、それ。


茅並「ん?投堂、どうした?」


省鑼「結局指揮者担当は誰にするか、って話は・・・どうなりました?」


決まってなかったのかよ!?俺、結構長い間B組を覗きに行ってたぞ!?


茅並「いや、誰も立候補者がいなかったら話にすらならないだろ。誰か一人はやらないといけない以上、こうなったら最終手段:他薦以外ないな。」


するとクラスの何人かが、視線を明後日の方向に逸らした。


静姫「・・・・・・?」キョトン


視杏「・・・あ〜〜〜!!!分かった分かった!わたしがやるから!これで他薦は無し!良いでしょ?」


何故か全員ホッとした表情をする視線を逸らした連中。


茅並「お、おぉ・・・。これで一先ず決まったな。あとは投堂と蓑倉と舶を中心にまとめてく感じだな。」


陶次郎「よしっ、これで今日の話し合いは終わり、ということで・・・。」




キーン↑コーン↓カーン↑コーン↓




まるで俺達の話し合いが終わるのを待っていたかのように、チャイムが鳴り響いた。


茅並「はいはいもう終礼要らんから各自解散でー。お疲れ様ー。」


この適当っぷり、流石はグンチナちゃんだ。




0秒終礼を経た俺は、部活へと向かおうとした。しかし、視杏に呼び止められた。


視杏「ちょっと待って。少し話したい事があるんだけど、良い?」


静姫「えっ?視杏、どうしたの?」


そこには舶と投堂さんもいた。


陶次郎「いやー、その、なんというか?宇橋ちゃんの歌の矯正について、少し話しておこうかなー、って。」


視杏「静姫ってさ、リズム感とか音感とかは抜群に良いのに、歌うと本当に音痴だよね。なんで?」


グサッ。


陶次郎「蓑倉。折角こっちで色々配慮した言い方してるのに、直球の表現は良くないだろ!宇橋ちゃんだって、色々あるんだよ。色々と。」


ブスッ。舶、絶対に態とやってるだろ、それ。


省鑼「あのー・・・。二人とも、実際に宇橋さんの歌をここで聞いてみた方が良いと思うんだけど、どうかな?私、1年の時はクラスが違ったから、宇橋さんの歌、ちゃんと聞いてないし。」


辻錦の高等部では芸術選択科目(音楽or書道or美術)が1年しかないのだ。流石は進学校。


視杏「んー・・・。それもそうね。投堂ちゃん、音楽室って空いてる?」


省鑼「吹奏楽部は基本的に金曜日の活動がないから、多分空いてるとは思うけど・・・。」




省鑼「・・・・・・空いてた。」


静姫「鍵すら開いてた。」


視杏「使われてる形跡は無かった。」


陶次郎「これは入っていいと思った。」


・・・・・・なんだこれ。


静姫「何はともあれ、入ってみましょ。何の曲を歌ったら良い?取り敢えず、去年1年4組で歌った曲で良い?私は伴奏担当で歌ってなかったけど、楽譜は残してるし。」


省鑼「あぁ、あの曲だね。有名なヤツだから、或る程度インプットは出来てるし、それで良いよ。」


スゲェな。流石はピアノのエキスパート。


省鑼「準備できたら、声掛けてね。」


静姫「うん、わかった。」




そして、十数分後。


静姫「歌い終わったけど、どう?」


視杏「」


陶次郎「」


省鑼「」


全員黙ってしまった。


視杏「・・・・・・忖度無しに言うよ?」


静姫「ど、どうぞ・・・?」




視杏「これさぁ、去年より悪化してない?声の良さをここ迄駄目にする事ってある?」


静姫「えっ、そんなに!?」


省鑼「確かに。宝の持ち腐れというか、素材を台無しにしてるというか、高級和牛をウェルダンに焼いてケチャップ漬けて食べるみたいな・・・。」


陶次郎「と、投堂さん・・・!?」


省鑼「これは・・・扱き甲斐がありそうだね。宇橋さん、申し訳ないけど、ちょっと覚悟をしてた方が良いかもしれないね。」ニコッ


静姫「は、はいっ!」ビクッ


感じた事の無い圧を発する投堂さんの笑顔に、身震いするしかなかった。こういうおとなしそうな子がキレる時に豹変するのは、世の理なのだろうか。俺は少し、陽三くんの顔を思い浮かべた。




〜メルティッド・チョコレート〜

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