二話:優越感

 組み手当日...


 ハルは首を回しながら共同訓練場へ向かっていた。

 正直にハルには組み手で全勝する自信があった、予備動作が遅いのだ、体感している時間が違うと思っていたのだ。

 一人で剣士科五人と組み手を行っていくのだが、何せ前の組み手は全勝している。自信があって当たりまえなのだ。

「おいおい、一人で五人も連続で戦えんのか?」

 剣士科の木剣を持った一人が煽ってくるが気にも留めずに岩で出来た訓練場に上がっていく。

「さぁ、誰から?」

 こちらもやる気十分と煽り反す、そういうと無造作に上がってきて、いきなり走り出す。

「どぉるぁ!」

 なん工夫もない直線的な斬りかかり

「はぁぁ...」

 と呆れながら横にズレて足をかけ、倒して押さえつける。

「1」

 どうだ?と言わんばかりに顔をにやけさせる。

「グギァ!」「ブッ、」「ベッ!」

 みるみるうちにやられていく剣士科から最後の一人が出てきた。

「行くよっ!」

 爽やかでモテそうな青年が剣を構えて出た

「フッッ!」

 掛け声と共に他の学び手とは違うスピードで間合いを詰めてくる、流石に横ずれだけでは避けられない連撃が繰り出される。

「今だッッ!」

 少し体勢を崩させたに見せたハルに強い斬りつけが襲いかかる。

「もらったぜ!」

 それをすかさず避けて後ろに回って操糸で縛ろうとした時....

「バックスラッシュ!!」

 振り切ったはずの木剣がさらに加速して真後に切り返してくる、それは体内のマナを利用したアーツと呼ばれるマナを特定の流し方、使い方をすると使えるものだった。

まさか傭兵廃校の時点でアーツを使える奴までいるとは...

 あれは流石に避けられない!

「クッッ!」

 咄嗟に腕をクロスさせ前に頑丈な操糸を何重にもして受ける、強い衝撃がハルにくる、地面に叩きつけられた。

「決まったね?」

 喉元に木剣を突き付けて言う。

「まだだッッ!」

 ハルは突き付けられた木剣を強く握り、思いっきり後ろに投げつけた。

 ドォンッッ!

 大きな音と共に剣士科の学び手が叩きつけられていた。

「これで組み手は俺の勝ちだ!!」

 そう言って立ち上がるとハルは何も言わずに上を見て顔をニヤけさせていた。

 五人連続で勝ったという、自分は特別に強いという、マナが使える相手にも勝ったという、〔優越感〕に浸っていた....。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る