第5話 ジレンマ

部屋に戻ると、ベッドに倒れた。今日一日の疲れが出たのかも知れない。そのまま寝てしまった。

 いくらか短針が動いたのか、自然と目は覚めた。

学生の本分は勉学である。

 夕ご飯をお腹に満たし、箸を持つ手にはペンが握られていた。

 ラジオをいつものヘルツに合わせ、参考書を開き、問題を解いていく。

ペンは自分でも驚くくらい進んでいた。

これなら、志望校にもすんなり入学できるのではないという錯覚さえ覚える。

 しかし、錯覚なだけで実際に入学出来るかはまた別なのである。

勉強も一段落し、背もたれに背中を預け、伸びをした。

 急に、頭は手紙の事でいっぱいになった。

そのことを考えると、さっきまでのペースが嘘のように落ちていた。

 出した手紙はちゃんと届くのだろうか。

 もし、読んでくれたとしても返事をくれるだろうか。 

 もしかしたら、郵便局員の怠惰で届く事は無いのではという不安もある。

こうしたどこにぶつけて良いのか分からない不安は膨れ上がって行く。


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