第2話 テガミ
少し遅めに設定しておいたアラームが聞こえ、夢の続きを見る事は出来なかった。
しかし、覚えている事はある。占い師の前に座り、何かを占ってもらっていたのだ。そこまでしか覚えていない。
まぁ、そんな事はきっとどうでも良いのだろう。少しでも容量は勉強に取っておきたい。
早速着替え、軽くご飯を食べ、家を出た。
海につき、少し沈む砂に足を取られながらゆっくりと歩いて行く。
心地よい波の音、遮るものは何も無い水平線。この景色を見ると自然と心が落ち着いてしまうから人間とは不思議なものだ。
季節を問わず、かつ気軽に訪れる場所としては正直独り占めしたい気持ちになる。
その場に腰を下ろし、深く息を吸う。そして吐く。体全体が洗われる気がした。気がしただけでも良い。自分がそう思ったのだからそれで良いのだ。
この先、どうなるのだろう。今楽しい事、過去の事、そんな事を思ってみる。
しかし、すぐに終わった。大して印象深い事柄が無く、少し寂しい気持ちになった。
すっと立ち上がり、ズボンについた、砂を払いまた歩き出す。
来た時よりも影が伸びている事に気がつきながら、足を前に出して行く。
右足が何かに当たった。確かめるように手に取ってみるがただの瓶だった。
瓶の中に一つの紙がある事以外は。
その場で瓶の蓋を開け、中の紙を取り出して開いた。
【この手紙を読んでいるどこかの誰かさんへ。
私は今、高校受験を控えています。しかし、毎日の勉強のストレスから解放されたくて、
この手紙を書きました。
学校でも、家でも勉強の毎日。そんな毎日を変えたくて、瓶に旅をさせました。
無事届くと良いな。
同じ境遇の人、もしくは、この経験を乗り越えた人、どなたでも構いません。
お返事待っています。】
可愛く並んだ丸文字を読み終えたとき、なぜか涙が流れていた。
でも、それは誰にも気付かれなかったので良しとする。
大事にポケットにしまい、家へと歩き出した。
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