第39話 決着
「次は、鳶田とその家族を探さないとな!」
ワカトキは奴隷を逃がしたことで笑顔が増していた。
「調子が上がってきた見たいだな。俺に何かあったら、ワカトキが俺の代わりになってくれよ。」と廃絶が言った。
「何かあったらってなんだよ!」っと笑いながら廃絶の頭をポンポンするワカトキ。
「あんまり、声出しだらダメだよ。さっさと先に進もう。」
そういうとワカトキと廃絶を見て、美波は湯地の背中を押し、進んで行った。
「おい、誰だ!そこに居るのは!」
みんなが2階の階段を上がってすぐ、後ろからそんな声が響き渡った。
「迎えに来たよ。鳶田さん。」
美波はそう言うと振り返った。
「なんで来たんだ。来ちゃダメだ。」
鳶田は走って美波の前に行き、肩を掴んでそう言った。
「奴隷は解放したよ。これで後は、お母さんお父さんを何とかするだけだから!」と笑う美波の頭を撫でた。
そして、みんなの方を向いて涙を流しながらこう言った。
「俺の為にありがとう。2人は一番奥の部屋にいる。俺も一緒に行くよ。」
鳶田は潔癖症では無く、帰ってきた親の影響で人と愛を持って関わることを封じ、人と触れることを無意識に避けていたのだった。
しかし、信じていい仲間が出来たことによって、封をあけ、避けることも無くなったのだ。
物音に気づき、「みんな、行くぞ!」と目付きを変えた緋色が言った。
恐怖、不安、苦しさの全てを押し殺してみんなは前へと進んで行った。
ガチャ
そっと扉を開けると、そこには男性と女性が退屈そうにテレビを見ていた。
そして、
「今から何が始まるのか楽しみ〜。」と言って2人はドアの方へと顔を向けたのだった。
その姿に1歩後ろへ下がる者もいた。
それでも、前へ進もうとする意思が足をつき動かした。
タッタッタッ
最初にドアの先へと進んだのは廃絶だった。
それに続いて緋色、ワカトキ、神無、湯地が中へと入っていった。
他のみんなも進んでいこうとするが、2人がかりに苦戦するメンバーを見て、動けなくなってしまった。
「この状況を見てわかる通り、この2人はやばい。ここは俺たちに任せて、周りを見張ってくれ。」と真城が言った。
その真城を突き飛ばす形で大羅が中に入っていった。
「何すんだ大羅!」とムカッとした表情で真城も中へと進んでいった。
「私も戦うよ。」
そう言い出したのは都だった。
「女だからって舐められないようにここで力を見せないと。」
「でも…」という美波に「ごめん。」と言うと、中に入ってしまった。
1日前
「美波は絶対に戦ったらダメ。大将の首を取られた方が負けだ。騎馬戦と同じなんだよ。他のみんなもそう言ってる。」
現在
「湯地はそう言ってたけど、私もこのままじっとしてるだけなんてダメだ。」
そう言うとドアの前へと進んで行った。
ドアの向こうには血だらけになりながらも戦っている姿があった。
敵も味方も、ボロボロになり、痛々しい体になっていた。
グシャッ
グシャッ
2人の顔にキツイ一撃が入り、決着がついた。
女性に決めたのは緋色、男性に決めたのは廃絶だった。
「これで終わったな。」とワカトキが言った。
片腕しかないその手で、2人を担ぎ、椅子に座らせた。
「たっぷりと反省をしてもらいます。」
戦いが終わると美波はそう言ってペンと紙を2人に持たせた。
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