第29話 強き奴隷を求めて

「なんで知ってるのか気になるだろ?俺、実はその事件の日に狂乱メンバーになったんだよ。だから、あの場所で戦って、都を見つけることが出来たんだよ。」


ニヤッと笑った鳶田の口が動き出した。


「俺は、初めて見た時から廃絶の強さを気に入り、そして廃絶の全てを調べ尽くした。あの仲間割れのタイミングを狙って俺が狂乱に加わった。後は、殺した後に代わりの奴を奴隷から引き出せばいい。俺の計画は上手くいった。大成功だ。こうして廃絶は俺に助けて貰ったことで俺に逆らうことを避け、生きている。俺が守れと言ったら守ってくれる、ある意味、奴隷になったんだよ、廃絶は。」


「何それ…お兄ちゃんの死に関わってたの…」


恐怖で動けなくなっていた都が顔を上げた。


「ああ。そうだ。でも勘違いしないでくれ、廃絶自信が仲間割れを引き起こしたんだ。俺がそうなるように誘導した訳では無いからな。」


「なんで、私をあの時消さなかったの?私が居たのを知っているなら消せばよかったでしょ。なんで…」


そう言うと、都は唇を噛む。


「あの時お前は中学の制服を着ていた。歳が近い奴が怯えてることを考えたら…俺もあの頃はまだ完全な悪に染ってなかったからな。」


あの光景を思い出し懐かしむ鳶田。


「完全な悪?」


3人は声を揃えて言った。


「そうだ。あの時は奴隷にも少しは優しく出来てた。高校に入って俺は完全な悪に染り、そこから抜け出せれなくなったんだ。」


そう言った鳶田の目は輝きを放って潤んでいた。


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