第24話 湯地、廃絶、ワカトキ
「ワカトキか。水間だ。廃絶が何処にいるか知らないか?奴隷のことを伝えられたっきり電話にも出ないんだ。」
「何も分からないな…そう言えば湯地も電話にも出ないし家にもいなかった。2人で何か話してるんじゃないか?」
「そうかもな。なにか分かったら教えてくれ。」
「了解。」
電話を切ったワカトキは2人を探しに行った。
「湯地、昨日廃工場に来てただろ?」
廃絶は昨日、廃工場で人影を見ていた。
それを知った上であの場で話していたのであった。
「来てたらどうするんですか?」
湯地は怖がる素振りを見せずにそう言った。
「そう言うなら来てたってことだろ。わかりやすい奴だな。」
2人だけの冥利神社にはシーンとした空気が広がっている。
「…」
「ワカトキに言われたんだろ?あいつ俺の事大好きだからな!」
ニコッと笑った廃絶。
その笑顔を見ても緊張が解けない湯地である。
「なんであんな奴の言いなりになっているんですか。奴隷なんて本当は必要ないんですよね?」
廃絶は俯きながら話し始めた。
「そうだな。俺はあいつの言いなりになってる。奴隷も本当は必要ないんだ。だけど、どうしてもあいつに従うことしか出来ないんだ。そうしないと何も守れない。最強にすらなれない。」
タッタッタッ
ギュッ
湯地は走り出して廃絶の胸ぐらを掴んだ。
「何言ってるんですか!!あんな奴と関わったら自分もダメになる事ぐらいわかってますよね!」
廃絶はまだ俯いたままだった。
バシッ
廃絶の顔を叩いた湯地。
「廃絶くんは強い!たくさんの仲間を守れるくらい強い!」
廃絶の服をつかみながら一生懸命に口にする湯地。
そして大きく息を吸った。
「それを最強って言うんじゃないんですか!!」
ハッ
廃絶はその言葉を聞き顔を上げた。
「自分達の居場所を作ってそれを守るために喧嘩をする。俺の1番のダチが言ってた。でも俺は最強になる為ならなんでもいいと思ってた。湯地のさっきの言葉、そいつにピッタリの言葉だ。」
廃絶は笑った。
しかし同時に涙もこぼれた。
それを見てオドオドする湯地。
「あいつは居場所を作って仲間を守りたかったんだよな。俺はその気持ちを1番よく知ってて、1番酷く切り裂いた…」
廃絶は唇をギュッと噛む。
「1番のダチであり、1番の仲間だったあいつを俺は殺した。今も後悔はしてない。けど…」
大粒の涙が廃絶の頬を伝う。
「俺、あいつに会いたい。会いたくてたまらない。俺の隣には、あいつがいてほしい。こんなに思っても会えないんだよな…」
「隣に居るだろ。きっと。見えてないだけで。」
「ワカトキ!?なんでここに…」
湯地も驚いた表情を見せる。
「電話にも出ないから探したんだよ。2人とも。」
「あっ。すみません。電池切れてたみたいです。」
湯地は携帯を確認して頭を下げた。
「廃絶、響は守護神として隣にいるかもしれないぞ。見えてないだけで。だから強いのかもな。」
ワカトキは廃絶の頭を撫でた。
「ワカトキ!頭撫でんなよ!子供じゃないんだし!」
廃絶のプクッと膨れた頬に可愛いなと感じる湯地。
「あっ、ワカトキ。湯地を使って俺を探るの禁止な。」
「なんでその事を!?」
「湯地のこと気に入ったからって、そんなに使わせんなよ。疲れちゃうだろ。」
ワカトキの質問を無視する廃絶。
直接言いたくないようだ。
「それそろ俺、帰るわ。」
「また、急だな。」
「悪いな。」
「そう言えば、緋色が探してたぞ。ちゃんと連絡してやれよ。」
「了解。ワカトキ、湯地。今日はありがとな。」
手を振りながら廃絶は去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます