第18話 突然の事

タッタッタッ


「お前、強いんだな。」


(この声はあの時の…)


振り返るとそこには片腕の無い男がこちらを見ていた。


「決闘前に俺の背中押した人ですよね?」


湯地は少し恐れながらも聞いてみた。


「あぁ。そうだ。まさか夜恵を倒すなんてな。」


「夜恵のこと知っているんですか?」


そう聞くと表情が変わった。


「知ってるに決まってるよ。だってこの腕、そいつにやられたもんな。」


「!?」


(夜恵に腕を?冗談じゃないよね…仇を俺が倒しちゃったのか…)


「夜恵は俺のことが嫌いで仕方なかったらしい。それで俺に刃物を向けた。そして俺の腕を切り落とした。3年前の事だけどよく覚えてる。」


「夜恵が奴隷になってたのってそれがあったからなんですか?」


(やばい、つい質問してしまった。)


湯地は殺されてしまうのではないかと思い、後ろへ下がった。


「そうだ。でも奴隷になったのは夜恵の意思なんだ。俺の腕を無くした責任感じたんだと思う。」


「そうだったんですね…」


「あぁ。夜恵は一人っ子で親も時々しか帰ってこない家にいて、俺はずっと気にかけていた。それが嫌だったんだろうな。」


パンッ


男は手を叩いた。


「もうこんな話は無しだ。俺はお前に決めたよ。」


「??」


「何変な顔してんだよ。お前を狂乱に入れるって言ってんだよ。」


「えっ…狂乱に!?」


「あぁ。そうだ。俺は、1郡の若松 ときだ。みんなにはワカトキって呼ばれてる。これからよろしくな。」


「はい!よろしくお願いします!」


湯地は深く頭を下げた。

やっとここに入れると、やっとここまで来たんだと感じ喜んだ。


「で、名前は?」


「俺は麻宮 湯地です!」

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