第15話 奴隷の理由

「俺達は強くならないといけないよなー。だから、幼なじみだろーとなんだろーと関係なく力を振るうよー。俺はー。」


「ハハッ!俺もそのつもりだ!」



「よし、じゃあ行こっか。」


「うん。」


2人は奴隷達がいる場所に向かって音を立てないように走った。


「湯地、話があるからこっちに来て。」


美波はそれだけを伝えて湯地の腕を引っ張った。


「聞きたいことがあるの…」


木の影に着いた美波は湯地を見た。


「何?」


湯地は都をチラッと見てから美波を見た。


「狂乱の奴隷から解放することで湯地を救うことが出来るのか…それを聞きたいの。」


「はっきり言う。それじゃ俺は救えない。」


「じゃあどうすれば救えるの?」


湯地は少し俯き、それから沈黙が数分続いた。


そしてようやく話し始めた。


「俺は、狂乱を潰す為に自ら奴隷になったんだ。でも俺は弱いから奴隷止まりで狂乱のことなんにも知らないままで…」


「狂乱を潰す?何かあったの?」


「狂乱を潰さないとダメなんだよ。そういう命令なんだ。俺は初めから奴隷だったんだよ。中学の時も奴隷だった。隠しててごめんな。」


(湯地が奴隷だったなんて…そんなのあっていいはずないよ…あっちゃダメ。)


美波の心の中が燃え上がるように熱くなっていった。

それは湯地をこんな人生にした人に対してでもあるが、それに気づかなかった自分に対しての怒りでもあった。


「絶対救ってみせるから!湯地を奪還する!私の元に連れ戻す!だからもう少しだけ待ってて!」


「…」


「何か言ってあげたらどうなの?」


都は湯地を睨んだ。

こんなに想ってくれる美波が居るのに何もしない湯地に嫉妬心すら抱いた。


「待ってるよ。もし奴隷生活が終わるなら俺はきっと普通の人間になれるはずだから楽しみにして待ってる。」


ニコッと笑顔を見せた湯地。

それに涙する美波。

美波の頭を撫でる都。


「またね、湯地。」


「うん。またね。美波。」


湯地は奴隷の場所へと戻って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る