第6話 廃絶という男

「響とは、ずっとバカやっててそれなりに楽しかった。あいつが狂乱作ったのは俺達みたいな奴らをたくさん集めて楽しく騒いだりして、自分達の居場所を作ってそれを守るために喧嘩をする。そんな理由だった。だけど俺は、そんなあいつの気持ちがうざったかった。俺は…喧嘩をたくさんして強くなりたかった。誰も勝てないような最強になりたかった。その為なら人を殺す事だっていいと思った。だから、仲間割れを起こした。ただそれだけだ。」


「お兄ちゃんはいつもあんたの話をしてた。面白い奴だって、俺の1番のダチだって言ってたよ。」


「俺だってダチだと思ってた。そして未だにあいつ以上に気の合う奴には会っていない。」


廃絶は拳をギュッと握り直した。

セミの音が飛び交う中、強く芯のある声で話し始めた。


「でも、俺はあいつを殺したことを後悔してない。1番のダチだからこそ、拳でぶつかり合って終われたのは俺にとって大事な思い出になった。ただ心残りなのは、あいつと一緒にこの景色を見れなかったことだ。こんなに大きな集団になったのにあいつが居ないことだ。」


廃絶は目をうるっとさせてこう言った。


「俺が最強になることであいつも喜んでくれるといいな…」


「お兄ちゃんはあんたが最強になりたいってことを知ってた。その為にも自分も強くなりたいって言ってた。絶対最強になってよ。」


「なんでそんなこと言うんだよ!俺のこと殺したいほど憎んでんじゃ…」


「確かに憎んでるし、殺したいと思ってるよ。でも、もしここで殺したら最強にはなれない。お兄ちゃんが死んだ意味が無くなるでしょ。」


「ハハッ!お前あいつに似すぎ!」


「何笑ってるの!」


「別にいいでしょ!」


数分間笑い続けたその表情が真剣な表情に変わった。


「今日のことは許してやる。だからもう俺達と関わるなよ。わかったか?」


「鍛えておくから大丈夫。」


「なんだそれ!面白い奴だな!」


都は突然、廃絶の手を握ってこう言った。


「人を殺しちゃダメだよ。人を奴隷にしちゃダメだよ。」


「急にどうしたんだよ。」


「お願い。」


優しく都の手を解いた顔はどこか悲しげな表情をしていた。


「それは無理だ。もう引き下がれないんだ。ごめんな。」


そう言い残して廃絶は去ってしまった。

都は後を追いかけたかった。

しかし、最後の言葉が兄と最後に交わした言葉と同じで、都はその場から1歩も動けなかった。

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