第488話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十階の朝風呂のガールズトークの続き2

 ウルスラがパシャ、と顔をお湯で洗った後、話し続けた。


「慰めるにあたって、アールのいい所を並べ立てた訳よ。ほら、あいつ単純だから、褒めたらそのまま喜ぶじゃない?」

「それは知らないけど想像はつく」

「喜ぶのよ。だから、まあイケメンは間違いないじゃない? それに明るいし、仲間思いのいい奴だし、剣技はそれなりに成長して今は割と悪くないし、それにイケメンだしって褒めた訳」


 イケメンを二回言った。イケメンパーティーを募る位なので、やはりウルスラにとってイケメンか否かは重要らしい。そりゃあサツキだって、イケメンじゃないユラよりはイケメンなユラの方がいい。外見というのは好意を持つにあたりそこそこ重要なポイントになるのは確かだ。


 その外見という点から言っても、サツキはそもそもイケメンとはいえおっさんのリアムが本体だし、今のこの借り物のサツキの姿はぱっとしないしなので、この先誰かと恋愛関係になって一緒になるなんてことは夢のまた夢だろうな、と思った。自分で思って、少しがっかりした。折角自信がついてきたのに、折角男の人も怖くなくなってきたのに、と。


 だが今はウルスラの話だ。切り替えろ、サツキ。


 サツキは意識をウルスラに向けた。


「そうしたら?」

「そうしたら、アールがその……」

「頑張って言っちゃえ、ウルスラ!」

「う……うん! 頑張るわ! えーと、よく見たらウルスラって美人だねとか、瞳の色が綺麗だとか言われて、私もまあ酔っ払ってたこともあり、アールがあのイケメン顔で顔を近付けて来るから、その」


 サツキは待った。そんなサツキの期待に満ちた視線を理解したのだろう、ウルスラはこくりと頷くと言った。


「キス、しました!」

「おお!」


 サツキは拍手をした。


「あいつ、ぽやっとしてるからそういうのも下手くそかななんて思ってたら、さすがイケメンよね。経験豊富なのかな? 上手でね……私もついとろんとしてしまいまして」


 てへ、とウルスラが照れ笑いをした。


「二人で寝転がりながらキスをしてたら、疲れと酔いもあっていつの間にか二人共寝ちゃったから、それ以上は何もなかったんだけど」

「うんうん」

「起きて、酔いも覚めてさすがにこれは拙いぞと思った訳よ」

「何で?」

「だってアールよ?」


 だってアールだから、と言われるアールもなかなかに惨めだ。


「今は同じパーティーにいるのに、ユラやサツキがいるのにそういった関係になると、何ていうか恥ずかしいし、それにアールはイケメンだけど馬鹿じゃない? いい人だけど、この人と付き合ったりしたら結構大変そうだしとか色々思ったから、もうあれはなかったことにしようとしたのに、あれからアールが私を見る目がもう何ていうか熱っぽいというかその」


 惚れられてしまった訳だ。


「誤魔化そうと思ったのに皆に喋っちゃうし、何かあれから気になるし、アールはやけに優しいし、そうなるとこれまで男性に優しくされることなんてなかったから、その、悪くないかなあ、なんて」

「気になり出しちゃったのか」

「う……そうです……」


 ウルスラが、今度こそゆでダコの様に真っ赤に染まってしまった。

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