第382話 OLサツキの上級編、パーティー集合

 サツキ達がギルドの広間に向かうと、須藤さんがラムの姿をみてぴょんぴょん跳ねながら近付いてきた。ラムがサツキの手を離すと、須藤さんに飛びついて二人で跳ね出した。ああ、今日も堪んない程可愛い。何あれ。サツキは感動した。


 そんなサツキを悔しそうな表情で見上げるユラが隣にいるが、これに関してはユラに勝ち目はない。


「俺にもそういう優しい視線が欲しい」


 そしてそういう答えにくいことをさらっと言ってくるあたり、ユラは一筋縄ではいかないのだ。ツンツンと袖を引っ張って催促する。


「何か言ってよ」

「あ、後で」

「ふうん? じゃあ絶対だぞ」


 横に置いたり後回しにするのがサツキの得意技だが、どうもユラはそのまま置いた状態にはしてくれなさそうだ。でも、今はウルスラ達と合流が先だ。後で考えよう、そうしよう。


「ウルスラ! アール! おはよう」


 ユラには申し訳ないが、ずっと隣にいると意識がずっとユラに傾いていってしまう。だから、サツキは逃げる様に二人が待つテーブルに少し足早で歩いて行った。


「……おはよう、サツキ」

「おっはよー!」


 隣り合わせで座っていたウルスラとアールが、サツキ達を振り返る。おや、何だかウルスラの機嫌が悪い。椅子に座って足を組み腕組みもして、じとっとアールを睨みつけているじゃないか。そんなウルスラに睨みつけられているアールはというと、いつもの通りあっけらかんとした表情のままだ。


 多分、アールが何かやらかしたのだ。それもきっと、盛大に。


 サツキはウルスラの隣の席に座りつつ、ウルスラの顔を覗き込んだ。本当、どうしたんだろうか。


「ウルスラ? どうしたの?」

「うう……サツキ……!」


 ウルスラは、それだけ言うとテーブルに突っ伏してしまった。訳が分からないので、向かいのアールに尋ねてみた。


「アール、ウルスラに何したの?」

「何で俺が何かしたって決めつけてるんだよ。酷えなあサツキ」


 アールが口を尖らせて反論するが、サツキとアールの間に座ったユラが追撃する。


「だってやったんだろ? いいから吐けよ。スッキリするぞ」


 容赦ないユラの口撃に、アールがへへへ、と頭を掻いた。さすがのプラス思考、脳みそお花畑だ。目の前のウルスラが半泣きだというのに、反省の色一つ見せず笑えるとは。


「実はさー」

「やめてっ言わないでええっ!」


 ウルスラが突っ伏したまま言った。ユラが興味なさげにウルスラをチラッと見た後、アールにどうぞ、の仕草をした。


「えーじゃあ改めて言うと」


 言うんかい。つっこみたくなったが、まあ正直何があったのかは気にはなる。従って、サツキは隣で突っ伏して小刻みに震えているウルスラをなるべく視界に入れない様にして、アールを見た。


「昨日からウルスラがうちに来て一緒に荷造り手伝ってくれてたんだけどさ、母ちゃんが物凄い勢いで色んな物をしまっちゃったからさ、何がどこにあるか分からなくなってたんだよ」

「物が多過ぎなんだよ」

「なー。思った」


 なー、じゃない。サツキは身を乗り出した。


「それでそれで?」

「そしたらさ、どうしても俺の剣が見つからなくて、それが何故かベッド下の奥にあるのを発見した時にはもう夜になってた訳だ」

「商売道具……」


 サツキは絶句した。

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