第300話 OLサツキの中級編四日目、久々のパーティー全員集合前のひととき
ギルドの扉を開けると、ジュリアンがかったるそうに片手を上げて挨拶をしてきた。
「おはようお二人さん。何だか珍しい組み合わせだな」
「そうか?」
「同じパーティーのメンバーですけど」
「前まではユラが敬遠してた感じだったからよ、意外だったんだよ」
そうだったんだ? と聞こうとして、サツキは思い留まった。目の前のジュリアンは、リアムの中身がリアムからサツキに変わったことなど知る由もない。
「俺の気が変わったんだよ」
さらっとユラがそう答えて、会話は終了となった。
「もう来てるかな?」
サツキが奥のテーブルがある広間を覗いてみたが、まだ誰もいない。
「ちょっと早すぎたか?」
サツキの肩越しから広間を覗いたユラが言った。すると、ジュリアンが疲れた様な笑いをしてみせた。
「春祭り期間は皆浮かれてるからな。特にウルスラがいる女子寮なんかは結構大変だったみたいだぞ。結局何人忍び込んだんだったっけな?」
「え……ウルスラは無事なんですか!?」
「まあ曲がりなりにも見習いだけど勇者だからな、多少怪我はあったみたいだが」
「ええ……大丈夫なのかな」
やっぱり忍び込まれてしまったのか。忍び込む奴らは、いくら祭りだからといって、女子寮に男性が忍び込んで果たしてうまくいくとでも思っているのだろうか。だが、サツキが出会った黒い服のシーフの男、ああいった輩もいることを考えると、そういった馬鹿な考えを持つ男はいくらでもいるのかもしれなかった。
サツキはもう二度とお目にかかりたくなかったが。
ジュリアンが続けた。
「寮にただで治してくれる人間もいなかったみたいだし、町医者は金を取るからな、ウルスラのことだからユラにただで治してもらおうなんて思ってそうだよ、はっはっはっ」
はっはっはじゃないし。サツキはユラの腕を掴んだ。
「どうしようユラ、ウルスラの怪我、酷かったら私……手伝えばよかったかな」
するとユラがサツキの背中をトン、と優しく叩いた。
「心配すんな。そもそもはあのゴリラ女が自分で報酬を独り占めする為に他のメンバーを募らなかったと俺は思っている」
「独り占め」
ユラが深く頷いてみせた。
「そうだ。あいつは俺以上に金に困ってるからな、サツキに声をかけなかったのも恐らく報酬を分けたくなかったからだろ」
「メタモラの呪文を知らなかったとか?」
「いやあ、そりゃねえだろ。メタモラって比較的知られている呪文なんだよ。例のアルテラの事件の所為で、セットで語られることが多くてよ」
ではウルスラも知っていた可能性は高いということか。
「ただ現実にメタモラをサツキみたいにぽんぽん唱えられる奴って珍しいから、あまりその内容までは知られてないかもな」
「え?」
なんだって? サツキが驚いていると。
ユラが、逆に驚いた顔をした。
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