第225話 魔術師リアムの中級編三日目の出社
リアムと祐介がカフェを出、会社に向かっていると。
「祐介、あれは潮崎さんではないか?」
ある意味特徴的な外見の潮崎なので、遠目からでもすぐに分かる。祐介も気付いた様だ。
「本当だ。何か用事でもあったのかね? ……あれ? 隣に誰かいる」
「どれどれ?」
リアムが頑張って背伸びをしながら人混みの先を確認すると、潮崎の隣を歩いているのは、あれはどう見ても木佐ちゃんではないか。
「待ち合わせだろうか?」
「いやあ、あの二人に限ってまさかあ。たまたま会っただけでしょ」
前を行く二人の様子を窺うと、何やら楽しそうに話しては笑い合っている。
「元々仲はよいのか? 昨日のあの様子だと距離がありそうな感じがしたが」
謝罪すべきか迷っていた木佐ちゃんである。そこまで仲はよくないのではと感じてはいたが。
「いや? まあ業務上話す程度じゃない? 潮崎さんはいつも皆に頼られてて忙しそうだったし、木佐さんもいつも苛々してて近寄り難かったし、あの二人が日常会話をしているところなんて殆ど見たことがないな」
祐介もほぼ同意見の様である。
そういえば、昨日は無事礼を言うことが出来たのであろうか。
「もしかしたら、昨日の礼を言っていたのかもしれぬ」
「それはあるかもね」
「さすが木佐ちゃん殿だ、すべきことはきちんと完遂するとは、やはりしっかりされている」
「……出たよベタ褒め」
「何か言ったか?」
「何でもないです」
リアムは今一度前方の二人を眺める。何がそこまでおかしいのか、木佐ちゃんは沢山笑っていて、潮崎が頭を掻いて照れている様だ。一体何を話しているのか。気になる、気になるぞ!
すると、祐介がリアムの手を引っ張った。リアムが視線を隣の祐介に戻すと、案の定祐介の顔がむくれている。分かりやすい奴だ。
「見過ぎ」
「だって、気になるではないかっ」
どうしたって気になる。あんな風に木佐ちゃんが笑っているなど、
「別にサツキちゃんには関係ないでしょ」
祐介はにべもない。冷たい奴だ。だが気になるリアムは、引かなかった。
「いいや、関係ある! 木佐ちゃん殿は私の直属の上役だからな!」
すると、祐介がむすっとして言った。
「会社の人のプライベートにズカズカと踏み込んじゃ駄目だよ」
「プライベートとは何だ?」
「えーと、私的なこと。個人的なこと。会社に関係ないこと」
成程。確かに一緒に働いている人間の私的なことを余計なことまで知りたがるのはよくない。それこそ羽田と同じになってしまう。だがそうすると一点おかしな部分が出てくるのではないか。
「私と祐介は私的なことも会社で話しているではないか」
「だって僕とサツキちゃんはお付き合いしてる仲でしょ」
「成程……そういう私的な繋がりがある場合はいいのか」
「そう。でもサツキちゃんと木佐さんはないでしょ?」
どうも祐介は木佐ちゃんのことになると途端冷たくなる。
「さては祐介、勝負にどうしても勝ちたいのだな!?」
「あれまだ続いてたの?」
祐介が、呆れた様にわざとらしくはあ、と溜息をついた。
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