第158話 OLサツキの中級編初日の予定は
ギルドに到着すると、すでにウルスラが来ていた。ギルドの受付にいるジュリアンと何やら話し込んでいる。「そこをもう一声」とか「あのボス規格外だったし」という声が聞こえるので、恐らくルーンのダンジョンのボスの報酬価格を交渉しているのだろう。
テーブルが置いてある奥の広間へと行くと、アールが頭を抱えて座っていた。横には須藤さんが心配そうにウロウロとしている。
「アール、おはよう。どうしたの?」
「あ、サツキおはよう! いや実はさあ、今日から春祭りってお祭りがあるのをすっかり忘れててさ」
パーティーメンバーの誰もそれに触れないと思っていたら、やはり忘れていたらしい。まあドラゴンのダンジョンから帰還してまたすぐにルーンのダンジョンに潜ってしまっている。日付感覚がないのは仕方のないことかもしれなかった。
「私もさっき街の人から聞いたよ。すごいお祭りなんでしょ?」
そう言いながらアールの向かいの席に座る。アールは肩肘をついてうんうんと頷いた。
「あちこちから色んな人が来てそりゃあすごい祭りなんだけどさ、毎年うちの家族がこの街に遊びに来て散々飲み食いしまくる三日間でもあるんだよなー」
「アールの家族は別の街にいるの?」
そういえばアールもユラも誰とどう暮らしているのかなど全く聞かなかった。我ながら興味がないにも程があるなと少し笑える。同じパーティーのメンバーなのだから、もう少し興味を持たないとな。そう思った。
「うん、ここからは少し離れた街。田舎だからさー、俺ほら、都会っ子風じゃない?」
「どうだろう」
「そうなんだよ。だからこっちで一人暮らししてるんだ」
アールは押し切った。まあ思い込みも大事な時はある。
「宿を取るのもこの時期は大変だから、家族が押しかけてきて俺を拘束する三日間……勿論俺には出会いなんてない……」
凹んでしまった。祭りで知り合った男女が幸せになるとかいうジンクスのことだろう。何か言うとまたひと悶着ありそうだったので、サツキは笑顔で流すことにした。
「てことで、次に会えるのは春祭り後だな」
「うん、まあじゃあ楽しんで」
「サツキなんか冷たくない?」
「気の所為気の所為」
これで一番うるさそうなのが排除出来た。ウルスラとラムと三人なら、春祭りも楽しそうだしドレスも着られるかもしれない。あとはユラの予定だが、ユラはまだ来ていない様だ。
「ユラは?」
一応聞くと、アールが教えてくれた。
「魔力が一回空っぽになっちゃったからな。多分寝坊だろ」
そういえば、魔力回復には睡眠だと前にユラが言っていた気がする。すると、噂をすれば何とかで、ユラが眠そうな顔で現れたのだった。
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