第126話 OLサツキ、初級編三日目の特訓は続く
ドラゴンに怒ったウルスラは、眩しい程の光を放っていた。
「誰か、覚醒したとか言ってた様な……」
あの時はまだユラに蘇生されたばかりで訳が分からなかったが、あの光はスライム達が発した光にもよく似ている。
「あれは俺が言った。多分ウルスラ達には聞こえなかったんじゃないか」
ユラが言った。そういえば、ユラが発していた言葉だった気もする。
アールがはて? といった顔をした。
「そんなことあったか?」
「私光ったの?」
ウルスラは自覚がなかったらしい。道理で誰も話題にしない筈だ。ドラゴン討伐に夢中で、そこまで気付かなかったのかもしれない。
サツキはこくこく頷いた。すごく眩しかった、それははっきりと覚えている。
「ちょっとお、何でユラ何にも言わないのよ」
ウルスラがぶすっとしながら文句を言うと、ユラは冷静な顔をしたまま言った。
「忘れてた」
はあー、と、ウルスラが深い深い溜息をついた。
「あんたねー、そういう大事なことを忘れる!?」
すると、ユラがムキになった。
「仕方ないだろ、あん時はリアムの蘇生でいっぱいいっぱいだったし、リアムが生き返ってびっくりしたし、そうこう言ってる内にドラゴン倒すしさ、興奮するじゃないか」
生き返ってびっくりしたのか? どういうことだおい、とつっこみたかったが、勿論そんなことは出来ない。サツキは二人のやり取りを見守ることにした。勿論ウルスラに肩入れした状態で、である。いけいけウルスラ、負けるなウルスラ。
「確かにね」
あっさりと認めた。認めちゃった。
「で、あんたから見てどうだったの?」
「ありゃあ多分
そうか、ウルスラは見習い勇者だった。見習いが取れたということは、今は勇者?
「あのー……」
サツキは遠慮がちに手を上げた。
「はい! サツキ!」
それまで静かだったアールが反応してくれた。多分、話についていけなかったんだろう。ポカンと口を開けてたから、恐らく間違ってはいない。
「そもそも勇者って何ですか先生!」
「うっ」
アールが即座に詰まった。しまった、名指ししなければよかったかもしれない。
「勇者っていうのは、剣士とか魔術師とか特定の戦い方をしない、バランス型の職業よ」
代わりにウルスラが答えた。世界に一人、とかそういうものではないらしい。
「ただね、知っての通り私は魔力が全くないから、正直適正はあんまりなくてね。だからずっと見習いのまま。でも、私がまだ物凄く小さな子供の時、住んでた村がドラゴンに襲われたらしくて」
アールもユラも初めて聞く話なのか、真剣な眼差しでウルスラの話に耳を傾けている。
「その時に、燃え盛る家の中で私を見つけてくれたのが勇者だったらしいのよね。私はそれを聞いて育ったから、いつか勇者になって人の役に立とう! て勇者を目指してた訳」
ウルスラの笑顔に憂いはない。ないだけに、物悲しかった。
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