第88話 OLサツキ、初級編二日目の特訓は進む

 ダンジョンの地下六階は、これまでのスライムだらけのフロアとは一転、蜥蜴とかげの様な地べたを這いずり回るタイプのモンスターが多いとはユラの説明だ。


「と、蜥蜴……」


 サツキの脳裏に、あのワニの様な大きさの焦げたゴルガーラ蜥蜴の最期の姿が浮かんだ。ひく、と顔を引き攣らせていると、ウルスラがカラカラと笑った。


「サツキの一発目はゴルガーラ蜥蜴だったもんねえ。しかも大量発生! あれには参ったわ」

「ウルスラ何もしなかったよね?」


 思わずサツキはつっこみを入れた。そして驚く。この万年コミュ障のサツキが、自然につっこみを入れている! 凄い! やっぱりリアムの身体は凄いかも! サツキは目一杯感動した。


「何、そのゴルガーラ蜥蜴大量発生とかいう恐ろしいの」


 ユラが尋ねると、ウルスラが簡単に説明をした。


「私の女子寮に私の荷物を取りに行った時に、丁度水場にゴルガーラ蜥蜴が大量発生しちゃってねえ。イルミナで女の子になってたサツキがフレイマ連発で格好よく倒したんだけど、最後に一匹残った奴に唾掛けられちゃって」

「うっわあ……臭そう」


 ユラの顔が思い切り歪む。サツキは深く頷いた。恐ろしく臭かった。気絶する程臭かった。しかもその後着させられたイエティの毛皮も臭かった。


 ウルスラが続ける。


「で、サツキが気絶しちゃってイルミナが解けちゃって、唾が付いたズボンを脱がして燃やしたのが私」

「ウルスラ何にもやってないじゃん」


 アールまでつっこみを入れた。


「仕方ないでしょ、ドアをいっせーのせ! で開けようとしたら外開きだったんだもの」


 三、ニ、一じゃなかったっけと思ったがスルーした。


 アールが外開きに開ける仕草をして、成程と頷いている。


「なら仕方ない」


 何故そうなる。でもアールにはつっこめなかった。どうもウルスラには出来るが、アールにはまだ無理な様だ。


「ゴルガーラ蜥蜴はダンジョンのレベルで言えば中級の上の方にいる感じだから、初バトルとしては結構ハードだったのかもな」


 ユラが褒めているのか慰めているのか、あまり読めない表情のまま言った。ユラはどちらかというとクールビューティー、しかもなかなかのポーカーフェイスだ。口調もややひねくれ気味なので、どちらかと言わずとも気の弱いサツキが苦手なタイプだった。


 でも、今はリアムだ。負けない!


「結構頑張りました!」

「まあ唾掛けられて気絶だと笑えるけどね」


 やっぱりこいつは苦手だ。ユラは気にした様子もなく後を続けた。


「それに比べれば、ここにいる蜥蜴はでかいだけで攻撃力も低い。戦うにはもってこいだ」

「ただねえ……」


 ウルスラが嫌そうな顔をした。やはり何かあるのだ。すると。


「ウルスラ! 出たぞ!」


 アールが剣を構える。サツキ達一行の前に立ちはだかっているのは、ぼこぼこの身体をした七色の大蜥蜴だった。

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