第54話 OLサツキ、宣戦布告に巻き込まれる

 イルミナの魔法も、イルミナ・フィンで解除が出来た。


 カーテン越しに服を交換すると、サツキとウルスラはさっさと着替えを終わらせる。


 長年連れ添ったあの大きな胸がなくなり、どこかホッとしている自分がいた。


 まだリアムの身体に入ったのは昨日のことだというのに、早くも馴染んできている。やはりリアムの脳を使用しているのが原因かもしれない。


 このままずっとこの身体にいたら、いずれは心から男になるのだろうか。少なくともリアムの身体のあそこはもう気にならないし、胸があると違和感を覚える。


「え……そうしたら、その内私、女の人を好きになったりしちゃったり……?」


 これまでの人生、まともな恋などしたことはなかった。常に俯く人生。時折真面目に告白してくる人もいたが、怖くてまともに向き合えなかった。


「サツキー?」

「あ、はーい」


 更衣室を出ると、いつものウルスラがニコニコと待っていた。何となく眩しく見えるのは、リアムを通して見ているからだろうか。


 もしかして、ウルスラと付き合っちゃったりして?


 そんな考えがぽっと浮かび、女性となら怖くないかも、なんて思った。でも恋人となったらあれこれやるだろうし、自分にそんなこと……と想像していたところ。


「えっ」


 股間部分に感じる違和感。何だこれ、何だ何だ何だ! サツキが焦っていると。


 ウルスラがニヤリと笑った。


「やだーサツキったら。いやらしいこと考えちゃったんでしょ、ふふふ」

「えっいやっそのっえ!? 何これ、いやああああ!」


 サツキが半泣きになりしゃがみ込むと、ウルスラが慰めた。


「分かる分かる。私も昔、ギルドの依頼でファンに追いかけられて彼女の家に行けないっていうイケメンの逃走経路を確保する依頼を受けた時、イルミナの魔法をパーティーの仲間に掛けてもらって囮になったら捕まっちゃって、触られると変な気分になっちゃったりして、あはは」


 なかなかにハードな経験だ。サツキは尋ねた。


「そ、その後どうなったの?」

「仲間がイルミナ・フィンを唱えてくれて事なきを得たわ」


 サツキはホッと胸を撫で下ろし、あそこの違和感もなくなっていることに気付いた。


「あ、もう平気みたい」

「ふふ、じゃあアール達を元に戻しましょっか」


 サツキはフリーズ・フィンを唱えると、二人が恨めしそうな顔で自分達を見るのを少し楽しい気分で眺めた。


「で、これまでの説明だけど」


 席についたウルスラが、簡単に状況を説明する。


 ようやく把握したらしい二人は、初級ダンジョン行きを引き受けた。


 アールがサツキをチラチラ見ながら言う。


「てことはさ、中身はさっきの巨乳ちゃんなんだよな?」


 言い方が気に食わない。


「イルミナがあればあの姿は毎日拝める……俺! 彼氏に立候補するぜ!」

「へっ!?」

「何馬鹿なこと言ってんのよ! サツキは渡さないわ!」

「何だと! この俺と勝負するのか!」

「受けて立つわ!」

「えーとあの、二人とも?」


 サツキが止めようと声を掛けると。


「俺にはあの谷間に指を入れさせてもらえればそれでいいかな」


 ユラが阿呆なことをイケメン顔をにっこりとさせつつ言った。

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