第6話 OLサツキを助けた者は

 ドウウウン……! と大きな音を立て辺りに土煙を巻き起こした赤い体の爬虫類は、先程クソダサい技名をシャウトした女によって首を切り落とされた。


「馬鹿力……」


 思わず呟くと、サツキの背中を支えていた金髪イケメン、確かユラと呼ばれていた男が人差し指を口に当て、しいーっとやった。


「ウルスラは気にしてるんだから。知ってるだろ? リアム」


 勿論知る由もない。それにリアムじゃないけど、あまりの急展開に言葉が詰まって出てこなくなってしまった。


「あれは、今何をしてるの?」


 ウルスラと呼ばれた茶髪の女ともう一人いる黒髪の男で、ドラゴンの口辺りで剣を振り回したり引っ張ったりしている。


 サツキの言葉に憐れむ様な視線を向けつつ、金髪イケメンのユラが答えた。


「それすらも分からなく……いや、気にするなリアム、俺達はこれで大金持ちだからな、この後ゆっくり養生すればきっとよくなる!」


 ユラはうんうん、と頷くばかりで答えを教えてはくれなかった。先程からの言動といい、どうもこの金髪イケメンは少し脳みそが足りてないのかもしれない。


 仕方ない、あまり会話は得意ではなかったけど、サツキは勇気を振り絞って再度尋ねた。


「あ、あの、質問の答えは……」

「あ! そうだった悪い悪い! あはは!」

「……」


 やはり脳みそが足りてなさそうだ。


「あれはな、ドラゴンの髭を切り落としてるんだよ。そいつをギルドに持っていけば、退治した証拠になって賞金が払われるって寸法さ!」

「へえ……」


 ユラは興奮気味だった。


「ドラゴンなんてここ数年誰も倒したなんて聞いてないからさ、俺たちゃ帰ったら英雄だぜ!」

「帰る……」


 この身体にも家族があり、家があるのだろうことにようやく気が付いた。


「わ、私、何処に帰ればいいか分からないよ……」


 野太い声が出てきて違和感が半端ないが、それでもドラゴンが跋扈ばっこする様な見知らぬ世界でさあ帰れと言われても困る。


 視界が涙で滲み、サツキは隣で若干引き攣った笑みを浮かべるユラの腕にしがみついた。


「お願い! 置いて行かないで……!」

「えっ? いや、置いてなんか行かないけどさ、リアムなんか雰囲気変わってねえ?」

「お願い!」

「お、おお」


 どう考えても自分は男の身体の中に入ってしまっている。顔が分からないので年齢は分からないが、手の皮膚を見る限り中年。胸がないのは非常に嬉しいが、代わりに股間にあれがある。


 帰る場所も分からなければ、排尿の仕方も分からない。


 サツキには、この人達に縋る以外の道はなかった。

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