第2話

「はぁ!?別れるってふざけてんの!?」


俺、冨山蓮とやま れんは一昨日18歳を迎えたちょっと平均より身長が低いのが悩みな高校三年生。


そんな俺は今、彼女に別れ話を切り出したところひどく激昂されており、少し涙目です。


「ってか何であんたが涙目なのよ!泣きたいのはこっちだっての!あぁもう、まじありえない。もういいわよ、あんたと付き合ってたのだってあんたがちょっと金持ちだっただけだし。あんたみたいな女より女みたいな男、こっちから願い下げよ!!」


本心かそうでないかはわからない。


だけど俺が傷つきそうなセリフをたくさん吐いて俺の彼女、いや元カノはドスドスと歩き去っていく。


そんな彼女の姿を見て俺は自分の両手で顔を覆い隠してうめき声をあげた。


「あぁ~もう……本当に何でこんなことに……。」


そう、すべてはさかのぼる事二日前。


姉の冨山小春が結婚し、卯月小春と苗字を変えて一週間ほどたったその日に俺の人生が変わるような出来事が起きてしまったのだ。


幼い頃に両親を亡くした俺と姉は幼少期は親戚の家で育てられた。


その親せきというのが父がまぁまぁそこそこ大きな会社の社長だったため、その恩恵にあやかろうと俺たちを引き取ったというまぁよくありがちな引き取り理由で、俺や姉が会社の経営ができるようになるまでは親族である自分たちが経営を支えるといって会社の経営権にも手を出してきた。


その当時の俺はまだ小学2年生で、年の離れていた姉は中学生1年生だった。


中学生が会社経営などできないとその親せきは思ったのだがところがどっこい。


実は姉はひどく天才で、俺を覆いて飛び級でアメリカの大学に入学し、早々に卒業して帰ってきて会社を継いだ。


それからすぐに姉は俺を引き取って二人暮らしを始めた。


それが姉が中学3年の夏の話。


うちの姉はそんな感じでなんていうかかっこいい人だ。


何を考えているかがよくわからないときもあるけど、それでも姉はいつだって俺の事を思ってくれていることは理解できた。


だから俺が疑問に思うような行動も理由があって、姉が正しいんだといつだって思えた。


たった一人の家族である姉は俺にとって何にも代えがたい大切な存在なのである。


ちなみに今姉はまぁまぁそこそこだった父の会社を大会社にまで成長させ、現在は代表取締役会長の席についており、姉の旦那の卯月優斗さんが社長の席についている。


ちなみに優斗さんは姉と同じ年で、俺たち姉弟とは幼馴染。


長い付き合いを経て二人は晴れてゴールインしたと思われた矢先、二人の結婚はあくまで契約結婚であることが明かされたのだ。


(っていうかそれ以上の事が知りたかったら今日会社に来いって何なんだよ、姉さん!)


一昨日、姉さんは夕方ごろに突然仕事が入ったといって家を出ていった。


でもその際、俺にお前はゆっくりしていけと言って出してくれたジュースの中にあろうことか催淫剤を混ぜて出かけたのだ。


そして薬が回ってきたところ俺は優斗さんに寝室へ連れていかれて――――――


(本当、今からでも穴があったら入りたい。)


恥ずかしくて日の光を見ることすらできない。


(俺、今までの彼女ともあんなことしたことなかったのにっ……それも幼い頃からの顔見知りの男の人が初めてで、何度も何度も……)


思い出すと顔から火が出そうになる。


ついでに言えば忘れたいのに俺がいかがわしい喘ぎ声を出しまくっていたことは耳に残っていて覚えている。


まるであの時は俺が俺じゃなかったみたいな感覚だった。


(ってあぁもう!!とりあえず姉さんにしっかりと説明してもらわねば!!!)


俺はリュックサックを背負いなおし、気合を入れると姉さんの待つ亡き父が創立した会社へと向かったのだった。

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