第9話 教会とか冒険ギルドとかではないのね
今日は、能力測定するのよね・・・嫌だわ。ショボい能力で、ハンフレイパパにガッカリさせちゃったらどうしましょう・・・。
朝食を取るために、そんなことを思いながら階段を下りていくの。もちろん、一人で下りるには大変だし時間がかかるので、ミラに抱き抱えてもらってだわ。そして、そのままにダイニングルーム入ると、中央のダイニングテーブルには、もうハンフレイパパとマリアンヌママ、カーティスが席に着いていたわ。
「おあおーぎょにゃいみゃしゅ」(おはようございます)
ミラはハンフレイたちに一礼し、私は抱き抱えられたまま挨拶をするわ。
「おはよう、ルーナ」
ハンフレイパパが微笑みながら、いつものように挨拶を返してくれたわ。
おっ今日は愛称で呼ばれたわ。良かったわ~。
「おはよう、ルーナ」
「ルーナ、おはよう!」
マリアンヌママも穏やかに微笑みながら、カーティスは元気に明るく挨拶を返してくれるわ。
挨拶が終わると、ミラがそのままマリアンヌママの隣の席に移動して、私をダイニングチェアーに下ろしたわ。
今日の朝は、白パンと黄金色のコンソメスープと果物、脇にサラダが添えてある薄くカットされた燻製のお肉数枚がメインみたいだわ。
配給してくれる使用人が、長ったらしい名前を言ってくれるけど、耳に入ってこないわ。いや、別の言葉で言うと、覚える気がないとも言うわね。そのお肉が、柔らかそうなハムに似ていて、美味しそうだなとしか頭に浮かばなかったの。
だけど、私だけみんなと違う別メニューなのよ。白パンに具沢山スープにカボチャペーストのサラダと果物、全てが私の食べやすいように小さくカットされているわ。
がっつりお肉を食べたいけど、まだ幼い私には消化しにくいらしいのよね・・・だから、お肉を細切れにしてスープに入れてくれているのだけど、お肉を食べた感がないわ~。
「今日は、ルーナの能力測定だね」
時折、スープが垂れたりカボチャペーストが付いたりする口の周りを、マリアンヌママが拭いてくれながら、もちゃもちゃもちゅもちゅと食べていると、ハンフレイパパが然り気無くいつもの朝の会話のように言ったわ。なので、思わずピタッと動きを止めてしまったの。
「うふふ、そうね。楽しみね。わたくしが幼い頃、能力測定をする前日の夜は楽しみで眠れなかったわ。ルーナは眠れたのかしら?」
「そうなんですか!?おとうさま、ぼくもやりたいです!」
マリアンヌママは昔を思い出したように懐かしみ、カーティスは聞いてなかったらしく驚いて自分もやりたいと主張したわ。そして私は、マリアンヌママの言葉に、食べ物を口いっぱいに入れたままなので声が出せず、ただコクコクと頷いたわ。
「そうだな、カートもやってみようか。本来の測定する年と2、3年くらいしか変わらないからね」
今更だけど、カートとはカーティスの愛称よ。
「まぁ!それは良いですわ。折角いらしてくださるのですから」
「ありがとうございます!おとうさま!!」
もきゅもきゅ、ごくんっと、口に入っていた物を飲み込んだわ。
「え?きょきょきゅりゅにょ?」(え?ここに来るの?)
マリアンヌの言った、「折角いらしてくださる」という言葉で、この屋敷に能力測定をする人が来ることが分かったの。
「そうだよ、ルーナはお出かけすると思ったのかい?」
「あい」
わざわざ、来てくれるのね。
どこか、そういう施設に行ってやるのかと思っていたわ~。日本での知識で、教会とか冒険ギルドでやるイメージだったのよね。あら、嫌だわ。これは物語の創作本の知識よね。
「人には個々として、様々な属性の能力を持っていると昨日言ったね。その能力はとても大切なものだから、他の人に詳しく話せないんだよ。こちらから能力測定をやりに行くと、他の人に知られる可能性がある。だから、来てもらうんだ。分かったかい?」
私もだけど、昨日はハンフレイパパもテンパっていたのかしら?そんな個々としてとか様々なとか、そんな詳しくは言っていなかったわ・・・人には属性の能力あるってくらいだけだったわ。様々なということは、1つだけではない可能性もあるのね。うんうん、でも分かるわ。特殊な能力や希少な能力が知られたら、利用させる可能性があるからなのよね!私は大丈夫だと思うけどね。モブですもの!!
「あい!」
「うん、分かってくれて嬉しいが、ルーナのその元気な返事は、また突拍子なことが起こりそうな感じだね・・・」
「そうね、お転婆もほどほどにお願いね」
「だいじょうぶだよ!ルーナはなにをしてもかわいいし、たのしいからね」
ハンフレイパパとマリアンヌママは困ったように、カーティスはニコニコと言うわ。
解せないですわ!
みんなが食べ終わっているなか、朝食をぱくぱくもきゅもきゅと急いで食べ終わると、それを待っていたみんながパーラーに移動するの。その後をミラに抱えられて続くわ。そして、その部屋にあるソファーの一つに下ろしてもらったの。
「もう少し経ったら、能力測定の魔道具が来るからね」
「楽しみね。カートもルーナも、どんなものがあるのかしらね」
「うん、たのしみです!」
「わちゃち、にょーりょきゅひぇんじゃっちゃりゃ、じょーしみゃしょー」(私、能力変だったら、どうしましょう)
「大丈夫だよ。変なものはないから」
「しょーにゃにょ?にょきゃっちゃわ」(そうなの?良かったわ)
ハンフレイパパにそう言われて、ホッと安堵するわ。
そして、ミラたち使用人がお茶をつぎ配り終わると、みんなでお茶を楽しんだわ。
「おとうさま、のうりょくにはぞくせいのほかになにかあるのですか?」
最近、幼児向けの魔法書などの本を読んでいるカーティスがハンフレイパパに聞くわ。
「あぁ、スキルという能力があるよ。一般的なもの、レアなもの、ユニークなものなどの種類があるんだ」
「ほんにのってました。レアやユニークをもっているひとはすごいんですよね?」
「そうだね。その2つを持っている者は、悪いことに使われたら困るから、信頼出来る家族以外は秘密にしないと駄目なんだよ」
「そうなんですね、わかりました。もし、そのふたつがでても、ぼくはかぞくいがいにはだれにもいいません」
ハンフレイパパの話を聞いて、能力測定の興奮でテンションが高めだったカーティスが、落ち着きを取り戻したみたいだわ。
そんなこんなしていると、玄関の方で賑やかな声が聞こえてきたの。
「来たみたいだね」
その後に、扉をトントンとノックする音が聞こえてきたわ。
「魔道具を持ってきてくれた者かい?」
「はい、いらっしゃいました」
ハンフレイパパの声かけに、使用人が扉の向こうから答えたわ。
「では、入れてあげてくれ」
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