第10話 みんなと同じくらいだと思うわ
ハンフレイパパの入室許可が出たので、使用人が扉を開けて客人をパーラーの中に入れるわ。
そして中に入って来たのは、対応していた使用人の他に、中肉中背で20代前半くらいの若い男性二人だったわ。彼らが着ている服は、白生地に青みが強い紺色の装飾や刺繍が施された騎士団の人が着ている物と似ているのよ。国の関係者かしら?
茶髪の彼が、大きめの白い箱を持っているわ。厚さも其なりにあるわね。A3サイズの辞書くらいかしら?木で出来ているみたいね。装飾のためなのか、何か模様が彫られているわ。グレーの髪色の彼は、手の平サイズの正方形の箱を持っているわね。これもA3サイズの箱と同じで、模様が彫られているわ。何が入っているのかしら?
親近感が湧くわ!同じモブね・・・あ、いや、別に見た目が悪いとか普通とかじゃないのよ。二人ともそれなりに顔は良いのよ。というか、この世界の人たちって、みんな顔は良いのよ。でも、この乙女ゲームの主要人物に比べたら・・・いや、比べちゃダメだけれども!だわ。けどね、ハンフレイパパもマリアンヌママもカーティスも同じモブだけども、主要人物に近い存在だからか、見た目がかなり良いのよね。ま、そんな家族の一員だから、私の容姿もまあまあだと思うわ。あ、第三者から見てよ。私、ナルシストではないから、自分の容姿を見て可愛いっては感じないもの・・・。
そんなことを考えていると、いつの間にか挨拶は終わっていたわ。そして、魔道具の設置を行っていたの。用意してあった大きめのテーブルの上には、黒っぽい台座の上に水晶が乗っているような物と、透明な石板のような物が置かれてあるわ。その水晶みたいな物は、オーロラ加工をされているみたいに、動かされる度に複雑な色合いが表れて、表情を変えるのよ。綺麗だわ~。
「では、アリアルーナ伯爵令嬢、こちらに手を翳していただけますか?」
設置が終わったのね。茶髪の彼が私に声をかけてきたわ。
「あい」
ミラがソファーから下ろしてくれるわ。次に、彼が手を翳してほしいと指した、丸い水晶のような物の前にトコトコと移動して、まだ幼く私のために用意された踏み台の上に乗ったの。そして、手を翳したわ。
「アリアルーナ伯爵令嬢、この魔道具に魔力注ぐと、こちらにご自身が持っている能力などが写されます。魔力を注ぐことが出来ますか?」
水晶のような物の奥に、透明な石板のような物が縦に置かれてあるわ。どうやら、それに能力が写し出されるみたいね。
「あい」
説明してくれる彼の顔を見て、コクリと頷くわ。
「まだ、魔力は注がないでくださいね」
おっと、危ないわ。直ぐに魔力を注ごうとしたけど、そう言われたので止めたわ。
「私が注ぎくださいと言いましたら、魔力を注いでください」
「あい」
私が返事をすると、彼らはその場から離れて行ったの。石板に写される内容が、確認出来ないくらいの距離を取るみたいね。
「では、アリアルーナ伯爵令嬢。どうぞ、注ぎください」
そう言われたので、今度こそ魔力を注ぐわ。
量は、どのくらい注げば良いのかしら?・・・あら、光ったわ!眩しくて目が開けられないっ・・・わ。
眩しすぎて思わず、ぎゅっと目をつぶってしまったけど、直ぐに光が収まってきたの。恐る恐る、目を開けてみるわ。すると、石板に文字が写し出されていたのよ。その文字ね、実際は浮いていないのに浮いているように見えるのよ。どんな仕組みになっているのかしら?
ふ~、能力測定するのって、こんなに光るのね。あ、石板に属性魔法って書かれているわ。へー、火と水と風と土と光と闇と無と聖ね。スキルの方は・・・あら?体力とか魔力とか筋力とかの数値は写されないのね。でも、これって、いつまで注げば良いのかしら?
いつまで魔力を注げば良いのか、聞いてみようと振り向くと、瞳をキラキラさせているカーティス以外は口を開いて唖然としていたわ。そんな彼らの姿に、思わず首を傾げてしまったわ。
「みょう、みゃりょきゅいーい?」(もう、魔力良い?)
「・・・え、あ、えぇ、魔力を止めて、手を離しても大丈夫です」
誰も何も言わないので聞いてみたら、能力測定の説明をしてくれた彼が戸惑いながらも、そう答えてくれたわ。
魔力を止めて手を離すと、石板の写された文字が消えたの。
???消えたわ・・・どうしてかしら?
「にゅんきゃ、きぇーちゃわ」(なんか、消えたわ)
「あ、はい、石板の方にまた魔力を注げば見えるようになります」
「しょーにゃにょにぇ、わきゃっちゃわ」(そうなのね、分かったわ)
踏み台から下りると、元いたソファーに戻るわ。そしてまた、ミラにソファーに座らせてもらったの。
「つぎは、ぼくだね」
カーティスが、座っていた椅子からスクっと立ち上がったわ。踏み台が片付けられ、石板の交換がされたわ。それが終わったテーブルの前までカーティス行くと、魔道具に魔力を注いだの。そしたら、私と同じくらいにそれが光ったのよ。
おぉ!近いと目が開けられなかったけど、傍から見ると、とても神々しいわね・・・。
光が収まると、カーティスは嬉しそうに直ぐ戻ってきたわ。けど、他のみんなは驚き疲れたという感じだったの。そのせいなのかどうかは分からないけど、能力測定に派遣されてきた彼らは、2つの石板をハンフレイパパに渡すと、帰路を急ぐかのように素早く魔道具を恙無く片付けて、挨拶をして帰っていったわ。
ハンフレイパパは、渡された2つの石板を交互に見ると、ため息を吐いたの。そして、立ち上がり私の所に来ると、同じソファーの隣に腰を下ろしたわ。ミラや使用人たちは然り気無く、パーラーの部屋から出ていったの。マリアンヌママも、ハンフレイパパが腰を下ろしたソファーの反対側に腰を下ろしたわ。カーティスは、マリアンヌママの膝の上乗せられたわ。
「まずは、ルーナの方だね。これに魔力を注いでみてほしい」
そう差し出された石板には、自分の名前が浮かび上がっていたの。それに魔力を注いでみたわ。
そこには、先ほど見た文字がまた浮かび上がったの。
【属性魔法】
火・水・風・土・光・闇・無・聖
【スキル】
投擲・護身術・付与・成長促進・物理攻撃力上昇・魔法攻撃力上昇・物理防御力上昇・魔法防御力上昇・無詠唱・言語理解・強運・天の采配
「「・・・・・・」」
ゲームのステータス表示と似ているわね。
だけど、それを見たハンフレイパパとマリアンヌママが固まちゃったの。
あら、何か変な能力あったのかしら?
でも私は、カーティスの能力も気になるのよね。ハンフレイパパの持っている石板をサッと取り、私の石板を見て「ぼくのとにてるね」と言っているカーティスに渡したわ。
「どょーじょ」(どうぞ)
「え、いいのかな?」
まだ、固まっているハンフレイパパとマリアンヌママを見て、カーティスはそう言うの。けど・・・。
「ちぃきゃんきゃきゃりゅちょおみょうわ」(時間かかると思うわ)
「うん、そうだね」
カーティスも早く見直したいのね。私の提案にすんなり納得して、自分の石板を受け取り魔力を注いだの。
【属性魔法】
火・水・風・土・光・闇・無・雷
【スキル】
剣術・護身術・付与・成長促進・物理攻撃力上昇・魔法攻撃力上昇・物理防御力上昇・魔法防御力上昇・詠唱短縮・幸運
「ほんちょーじゃわ、にちぇりゅわ」(本当だわ、似てるわ)
「おなじところいっぱいだね。おとうさま、みてください」
「「・・・・・・」」
私の石板を見て固まっていたハンフレイパパに、カーティスは自分の石板を見せたの。それを見て目を見開き、また固まってしまったの。
あら、また固まってしまったわ・・・。
「どうしたのですか?」
石板を見てから何も言わない二人を心配になったみたいで、カーティスが声をかけたわ。
「・・・マリアンヌ、大変なことになった。これは重大なことだ」
「・・・そうね。こんな数の属性とスキルを持つなんて」
「??みぃんにゃてゅおにゃにきゅにゃいよぉ?」(??みんなと同じくらいよ?)
何故、そんなに驚き、深刻になっているのかが分からないわ。
「でんかとえどとあんでぃーとでゅーも、同じくらいまほうをつかえますよ。せんせいがおしえてくれました」
「「!!!」」
カーティスがそう教えると、更に二人は驚いたみたいだわ。
「陛下に報告しなければ・・・いや、まずは公爵か」
そして、ハンフレイパパは使用人を呼ぶと、公爵家に使いを出したの。
ゲームで見るステータスのモノとあまり変わりないのだけど、何が大変で重大なことなのかしら・・・。
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