第4話:婚約破棄追放
俺は屋敷に戻って直ぐに武術と魔術の訓練を行った。
相手を務めてくれるのは傅役や教育係たちだった。
だが予想通り、前日の鍛錬と全く同じだった。
魔術も魔力がないので、集中力と呪文の鍛錬をしていただけだったが、神授の儀式までは魔力が与えられなし、儀式後も与えられなかったのでしかたのない事だった。
当然の事だが、魔力がないのだから、魔術が発動されるはずもなかった。
だがこれで確かめる事が終わったわけではない。
スキルは武術や魔術だけに与えられるものではない。
計算能力や職人の技、農作業に関するスキルもあるのだ。
それを確かめるためには、あらゆる勉学を試さないといけないし、農作業や職人仕事も確かめないといけない。
それに御爺様がノルベルト公爵としてバディスキルの情報を集めてくれてもいた。
確かな情報を集めるには、どうしても時間が必要だった。
だが、俺にそんな時間は与えられなかった。
以前から俺が不安に思っていた悪い予測が、想定外の形で的中してしまったのだ。
外れスキルだからと言って、家族から公爵家を追放される事はなかった。
邪悪な王女と結婚させられ、苦しむと言う事はもうなくなった。
なぜなら、王女に婚約破棄された上に、国外追放にされてしまったからだ。
「信じられませんわ!
事もあろうに、わたくしの婚約者が何の能力もない無能なスキルだなんて!
魔力もなければ武力もない、政治能力もなければ計算能力もない!
そんな無能な人間がわたくしの元婚約者だなんて、恥ずかし過ぎます。
お前のような者がこの国にいては、わたくしが笑われてしまいます。
お前たち、コレを今直ぐ国外に追放してしまいなさい」
いきなり王宮に呼び出されたかと思えば、王女に玉座のある壇上から見下ろされ、悪口雑言の数々を浴びせかけられた。
最後は物扱いのコレ呼ばわりされて、国外追放を宣言されてしまった。
宣言されただけでなく、有無を言わさず近衛騎士たちに連行されて馬車に乗せられ、そのまま国境まで一直線に運ばれてしまった。
俺は全く抵抗しなかった。
完全武装をした武力スキル持ちの近衛騎士が相手なのだ。
抵抗しても無駄どころか、下手をすれば斬り殺されるかもしれない。
そんな危険を冒すよりは、これからの事を考えた方が有益だった。
それに、ある意味では助かった可能性もあるのだ。
あんな王女の夫になるくらいなら、国外追放の方が幸せな人生かもしれない。
ありがたいことに、ノルベルト公爵家の公孫という立場が保険になった。
王女の命令で俺を追放するにしても、近衛騎士たちもできるだけノルベルト公爵家の敵意は買いたくなかったようで、扱いがとてもよかったのだ。
まあ、全ての費用はノルベルト公爵家が負担する事になるのだが、宿泊代や食費は俺がサインする事で、その場で手に入る最高の宿屋と食料が与えられた。
「俺も王女の夫にされるくらいなら国外追放の方がありがたい。
公爵家の公孫として抵抗しない事を誓うから、武器や防具、軍馬や保存食を購入させてくれないか」
俺は近衛騎士たちに頼んでみた。
「……分かりました。
誓いを立ててくださるのなら、武器や防具、保存食や薬に関しては買っていただいて構いませんが、馬に関しては許可できません。
どうしても必要ならば、国外を出てから購入されてください」
近衛騎士達もバカではないから、自分たちの安全を最優先する。
戦いになっても絶対に勝てる相手に武器や防具を与えても全く危険はないが、軍馬を与えては逃げられるかもしれないのだ。
あの王女に国外追放を命じられた相手を逃がしたと報告するのは絶対に嫌だろう。
「分かった、軍馬は諦めよう。
その代わり、王都に戻ったら、公爵家に俺がどの国に追放されたのか伝えてくれ。
公爵家の支援がないと、他国で生きるのは大変だからな。
伝えてくれればお礼がもらえるように手紙を書いておこう」
御爺様や父上の事だから、俺が追放されたその日のうちに情報をつかんでいると思いうが、念のために俺からも連絡を入れておいた方がいい。
一日、いや、一分一秒の支援の遅れが、死につながる事もあるのだから。
「……分かりました、お伝えするだけはお伝えしましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます