第5話俺はあなたの後を追いかけたが、言葉は心の中で空中分解した

「今日は初日だしこれで今日はお終いです。気を付けて帰るように」

 生徒達は先生の言葉で無言で立ち上がり静かに帰りだしていた。

 皆藤を見るとちょうど席を立ち帰ろうしていた。

 思ったんだけどこれはチャンスなんじゃないのか。

 帰る人達を見て友達と帰る人は数人見えるが、1人で帰る人はまったく友達がいなくて、1人だということだ。

 ってことは中学とまた一緒になったねといえば自ずと自然に会話が生まれる。

 皆藤はゆっくりと教室をでた。

 今あとを追えばまだ間に合う。

 どうする。

 どうする俺。

 こうやって考えている間も皆藤は1歩1歩と、俺の元から離れている。

 えーい考えてもしょうがない。

 いくしかねー。

 俺は教室から飛び出し廊下にでた。

 

 俺の眼中には皆藤はうつってなかった。

 多分下駄箱まで行ったのだろうと思い、下駄箱に着いても皆藤はいなく校門をでようとしていた。

 えーいこうしちゃあおれん。

 俺は急いで靴を履き替え皆藤のあとを追った。


 目の前には皆藤の後ろ姿が。

 ひと言声をかければ皆藤は振り向いてくれる距離だ。

 だけどそのひと言がどうしてもでない。

 のどまで声がでかかってるが、どうしてもどうしてもでない。

 このままあとを付いていったら間違いなくストーカー扱いをされてしまうので、今回は諦めることにした。

 本当に今回だけだぞ。


「良、今日学校どうだった?」

 家に帰ると俺の姉、富良野雫ふらのしずくが質問してきた。

「別に。普通だったよ」

「あれー皆藤ちゃんいなかった?」

 姉は俺の好きな人を知っている。

 教えたくはなかったが姉からプロレス技の1つキャメル・クラッチを決められ、気絶しそうになったので、思わず好きな人を叫んでしまった。

 ちなみに姉はプロレスラーではなく、ただ趣味でプロレスの技を研究しているだけなのだ。

 実験台はなぜだがこの俺を使ってだが。

「いたよ。なんで知ってるんだよ?」

「皆藤ちゃんから直接きいたからね」

 そうなのだ。

 実は姉と皆藤真奈美は仲がいいのだ。

「教えてよ?」

「死んでもいやだね」

 あーそういうノリね。

 めんどくさいわ。

「話しかけたりしたの?」

「話しかけようとは思ったんだけど」

「あーそれはダメないい方だね。あんたそんなんじゃあ一生彼女出来ないわよ」

「姉貴だって彼氏いないじゃんかよ?」

 姉は鋭い目線を俺に送った。

「私はいないじゃんないの。ただ作らないだけだから。そこら辺勘違いしないでよね」

 姉は俺とは違い見た目は別にまぁまぁ世間一般的には可愛いほうだから、いてもおかしくないとは思う。

 ただ性格を除いてはな。

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