第3話無言のまま俺はあなたをただ見つめていた

 教室の扉を開くと皆藤真奈美と視線が合った。

 その瞬間中学校卒業の日のフラれたことが一瞬でフラッシュバックされた。

 俺は顔を自分の席に指定された進行方向に向け、何事もなく席に座った。

 1番後ろの窓際の席だ。

 オセロでいうなら誰にも取られる事なく、自分の存在をずっと残せる場所。

 まさに俺の為にある場所と行っていい。

 その対角線上に皆藤真奈美の席がある。

 もしも皆藤真奈美が同じ色なら、俺も同じ色になるのだろう。

 無言のまま俺はあなたをただ見つめていた。


 新しいクラスで誰もがソワソワしていたが、教室内は静寂に包まれていた。

 その静寂を壊すかのように先生が入ってきた。

「始業式に向かうからみんな適当に並んでくれ」

 座っていた生徒は立ち上がり、教室の出入り口から近い人から順に廊下に並び体育館に向かって行った。

 この時に横になった人が運命だと思うのは俺だけの気のせいだろうが。

 当然話しかけられる外もなく、足音だけが廊下全体を響かせていた。


 始業式は先生の長ったらしい話しが終わり、教室に戻ってきて自己紹介が始まろうとしていた。

 先生が1番最初に指名をしたのは教室の出入り口に1番近い人、皆藤真奈美からだった。

 そうなると強制的に最後は俺か。

 1番最初最後が記憶に残りやすいから辞めて欲しいんだが。

 でもそれは大丈夫か。

 皆藤みたいに絶世の美少女でもなければ、何か魅力的な所がある訳でもないから注目はされないと思う………多分。

  

皆藤真奈美かいとうまなみです。趣味は水泳です。3年間よろしくお願いします」

 自己紹介が終わり席に座るまでクラスのほぼ全員の男子が皆藤に注目していた。

 自己紹介をしているから、見ているのは当たり前だと思っているならそれは間違いだ。

 たいていの男は女の子の顔を見て可愛いか、可愛くないのか判断しているのだ。

 結果として皆藤の次の女の子にはそんなに注目していないように感じた。

 この席だから教室の全てを見渡せるのだ。

 ただ一カ所だけ死角あるとするならば、真横に座っている人だ。

 なぜなら横を確認するということは横を完全に向かなければいけないからだ。


 自己紹介も進んでいき俺の横にいる人の番がきた。 

 先ほども思ったが横の人が運命の人かも知れない。

 顔を確認する為に横を向いた。


斎藤真帆さいとうまほです。趣味は料理を作ることです。中学から一緒の人もいるのでよろしくお願いします」

 可愛い。

 絶世の美少女がそこにはいて、俺を含めほとんどの男子生徒がみていた。

 

 そしていよいよ俺の番がきた。

 席を立つと皆藤とまた目があってしまった。

 あれ…なんで見てるの。

 男の感情は可愛い女の子がどうか。

 女の感情は………なんだよ。

 俺は自己紹介に少し時間がかかったが、やり終えて席に着いた。

 

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