特例はあるのです
私は王都に近い避暑地で、悠々自適の生活を送っている。
実家は兄が継いでいて、私は無爵位で祖父が買い与えてくれた屋敷で読書などを楽しんでいる。
一時期、私がもらった慰謝料目当てで釣り書きが送り付けられたが、すべて未開封で突き返した。
屋敷に来ようとした無礼者もいたが、まず先触れで拒否。
直接きた時点で強盗として警吏により拘束。
国法には慰謝料を得た者やその者の屋敷に接触することは禁止されている。
家族や親族が金策を申し込んだり、権力者がその権力で勝手に結婚届を出したり、中には相手を凌辱して配偶者になろうとする不届き者から守るための法だ。
そして、この法の怖いところは一律金貨100枚、300年の強制労働。
この強制労働は家族や一族が分けあって従事する。
300人で1年?
そこまで一族はいない。
100人で3年?
未成年にこの強制労働は背負わせられない。
さらに高齢者には労働させられない。
そうなれば100人もいない。
当主や領主代行や家業を担っている者も強制労働はさせられない。
そうなると多くてもせいぜい30人前後だろう。
強制労働者として登録すれば、自分が背負わされた期間は休むこともできない。
病にかかれば、その日数が加算される。
週休をとれば、労働期間が延長される。
無理して働けなくなれば、自身の子供が残りの日数を強制労働させられる。
もし子供が未成年なら、成人した誕生日当日に連行される。
すでに三件の突撃があり、悲劇が起きました。
最後の一件は元公爵家。
ベレッタの父、つまり炭鉱に送られた王弟の息子。
父親と異母妹のせいで褫爵され、妻の実家はすでに妻の兄が継いでおり、それでもなんとか領地経営を任せてもらっていたのです。
ですが、やはり父親の罪から社交界だけでなく領民からの信用はいただけず。
いえ、それだけなら問題はなかったでしょう。
次期公爵として領地経営を叩き込まれてきていたのですから、それだけの才能はございました。
ですが自然災害には敵わず。
どこも
……そして私の屋敷に直接乗り込んできました。
事前に手紙も届きましたが、未開封で送り返しました。
当然でしょう。
こういうときに国庫が開かれるのだから。
…………彼はそんな基本を忘れてしまっていたのです。
捕まって初めてそれを指摘され、300年の刑を与えられたと同時に、悲劇は始まりました。
最後まで支えてくれた夫人がショックで倒れて流産されたのです。
そして、夫人は精神を病んでしまいました。
夫が罪に問われ、子を亡くしたのですから。
この厳しい国法にも特例はあるのです。
『災害時の緊急措置による訴えを当主より出された場合、罪の執行を保留する』
この場合、夫人の兄が訴えることで保留が可能だったのです。
ですが、その追記に気付かず罰は執行されました。
執行後の救済は無効です。
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