これ以上私を幻滅させないでください
あまりにも信じられない慰謝料に呆然となっている間に到着した警吏に拘束されて貴族院へ連行されていった。
大人しかったのは「抵抗したら慰謝料が跳ね上がりますよ」と囁いたから。
持ち込もうとした家財や衣装などのすべても警吏が回収。
慰謝料の足しにするようです。
慰謝料未払い、接触禁止の違反金に迷惑料の追加。
それがあるため、貴族院に強制支払いをお願いしたのです。
ちなみにコール男爵の父親は侯爵家。
二人の結婚祝いに手持ちで一番低い爵位を贈ったのです。
「そんなことは慰謝料を一括で支払ってからじゃないですか?」
ベレッタ夫人のご実家は公爵家。
ですが庶子ということと廃籍を理由に慰謝料の支払いを拒みました。
「婚約破棄の原因になった時点では公爵家です」
「貴様、公爵家に楯突くか」
「あ、そう。では王家に請求します。現国王の姪ですからね」
「ぐぬぬぬぬぬ……」
「自分の節操なしで王家のタネをばら撒いた結果です。自業自得です」
「小娘……タダで済むと思うなよ」
「そのセリフは娘の慰謝料を耳を揃えて支払ってからいってください。そうそう。今回の接触禁止を破って騒ぎを起こしたのですから、その支払いもお願いしますね」
「我が家とは縁を切ったから関係ない!」
「それは『慰謝料を全額支払った時点から有効』であり、慰謝料が未払いである現時点で親子関係続行中。だから王家に請求すると申しました。ろくに事業もできないから、王家から公爵家存続費を受け取っていますよね」
「侮辱する気か!」
「それはこっちのセリフだ! 『王弟だから避妊しなくてもいい』ってあっちこっちで女性を見れば腰振ってきた結果が、不貞を働く節操ナシの庶子を作り出して慰謝料未払いで私みたいな小娘に頭が上がらないんだろうが!!!」
思わずブチ切れた私の声は貴族院全体に広がったようだ。
王弟だと好き勝手にしてきた尻拭いをさせられた公爵夫人も、今回はさすがに見放したようだ。
「もう、あなたの人生に付き添うのも疲れました。陛下に離縁を願い出ます」
「ま、待ってくれ。そんなことになったら……」
「あなたの娘の慰謝料を支払わず、親の責任も取らず。被害者を脅迫して慰謝料を踏み倒そうとするあなたの姿を見せて、これ以上私を幻滅させないでください」
侯爵家はギリギリ金貨800枚と接触禁止の金貨50枚の追加もあわせて支払いが間に合いました。
しかし公爵家の方は開き直ってこの騒動を長引かせたため、金貨49万枚と接触禁止違反の50枚、そして貴族院で脅迫をした咎で王弟本人の慰謝料150枚を王家から支払われた。
公爵夫妻の離縁も認められて、元夫人には慰謝料がこれまた王家より支払われた。
王弟は
コール夫妻は男爵位を褫爵後、侯爵家の領地で幽閉。
生まれた女の子は侯爵夫妻が養女として引き取り、正しい教育を与えていくらしい。
ただ、次期当主には親族が指名された。
コール夫妻は、ひっそりと死亡届が提出されていた。
幽閉の意味を蟄居とはき違えていたのだろうか。
こじんまりとした屋敷で商人を呼んでツケで買い物をしようとした。
侯爵当主が国王より毒杯をいただき、二人の好きなワインに含ませて贈った。
『最期の
死亡を伝える記事はそう締め括られていた。
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