婚約破棄の慰謝料に集らないでください
アーエル
そんなことありえませんから
「アンリエッタ。……なぜ君がここにいる」
「あら、それはどういうことでしょう?」
「君とは婚約を破棄したはずだ」
「ええ、そうですわね」
「だったらなぜ。ここは私の家だぞ」
「まあ、驚いた。ここは私の祖父が買った別邸であり、成人した私の屋敷ですわよ」
「突然の来訪者に開門を求められたがいかがいたしましょう」と言われて断ったのですが、何故か門前で騒がれているため迷惑行為で地方貴族院に通報して、警吏とついでに彼らの両親も呼びました。
彼らが来るまでの間、私が仕方なく相手をするため門を挟んでのご対面。
相手は元婚約者と、彼と不貞を働き言い逃れのできない
ただし、私と二度と接触しないという契約を堂々と破るとは思いませんでしたが。
ドサッと物音と共に、元婚約者の隣にいた女性……婚約破棄の原因の妊婦がものの見事に倒れたようです。
そりゃあ、真夏の暑さに負けたのでしょう。
「アンリエッタ、中へ……」
「なぜ?」
「なぜって……ベレッタは妊婦なんだぞ!」
「だから?」
「キ、キサマハナニヲ……」
うーん、その慌てようは演技なのでしょうねえ。
この門を開く気のない私に人道的に訴えて開けさせて追い出そうという魂胆が透けて丸見えですよ。
「ねえ、婚約破棄した慰謝料を支払いもせずにナニサマ?」
「それは……ベレッタの出産に金貨500枚が必要で……」
「生まれた子供を売り払う?」
「ふ、ふざけんな!」
「ふざけてるのはお二人でしょう? 慰謝料を支払わずに出産するということは、子供が慰謝料の借金を生まれながらに背負うというもの。コール男爵は金貨800枚、ベレッタ夫人は金貨700枚」
「慰謝料の額が最初とは違うじゃないか!」
「何を仰っているの? あなた方の慰謝料未払いの延滞料金も加算されておりますわ。それには婚約破棄の手続きで両家共にサインなさいましたよね」
ガタガタと震えていますね。
意識がないはずのベレッタ様も青ざめて。
確かどなたかに「出産祝いで相殺にさせる」と仰ってたようですが。
そんなことありえませんから。
現実が見えていないようなので思い出させてあげましょうか。
「どなたでしたっけ『耳を揃えて支払ってやる!』と大口叩いてらっしゃったのは。金貨400枚と350枚。期日までに支払わなかったから2倍の800枚と700枚。そして期日からひと月後は明後日ですが。このままお支払いいただけなければコール男爵は64万枚、ベレッタ夫人は49万枚」
「金額がおかしいだろ!」
「いいえ、あっておりますわ。コール男爵は現在の慰謝料は金貨800枚ですが、その倍……つまり800×800ですもの。同じく夫人は700×700。慰謝料などの金銭は、最初の延滞金は2倍ですが次からは倍。これは法律で決まっておりますし、婚約破棄の誓約書にも書かれておりますわよ」
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