第38話 鏃の大量発注
私の新たなメインウェポン――ディアホーンダガーができあがった。
刀身はコークスを用いた鋼を磨き上げているせいか、表面は青みを帯びているが、鋭い刃の部分はゴールドディアの枝角を用いているせいで山吹色に輝いている。
(ナビちゃん、スカウターの試着モードをお願い)
《はいなのです》
ナビちゃんの返事と同時、視界にスカウター装備を身に纏ったアオイの姿が現れた。
右手には戦狼の牙刀、左手にスチールダガーを持っている。
(右手)戦狼の牙刀(攻撃力+50)
(左手)スチールダガー(攻撃力+30)
(頭)スカウターキャップS(INT+10 非表示)
(体)スカウターシャツS(MND+20)
+皮の胸当て(VIT+10)
(腰)レザーベルト(STR+5)
+スローイングナイフ(5)
(脚)スカウタースカートS(VIT+20)
(手)スカウターグローブS(DEX+20)
(足)スカウターブーツS(AGI+20)
(耳)冒険者のピアス(経験値2倍)
(首)なし
(腕)なし
(指)スカウトリング(AGI+10)
思えば、この装備でレベル15のときからずっと戦ってきたんだよね。
(えっと、確か……左右の手に武器を装備する場合、左手の武器の攻撃力は、右手武器の攻撃力の75%になるんだよね)
《そうなのです》
(スチールダガーは単体で装備すると攻撃力+30だけど、右手に戦狼の牙刀を装備した状態だと攻撃力+35。右手武器を攻撃力+80のディアホーンダガーに変えると、スチールダガーの攻撃力は+60ってことになるの?)
《そのとおりなのです》
右手武器をディアホーンダガーに変更したら、左手武器もディアホーンダガーや戦狼の牙刀に変更しないといけないのかと思ったけど、どうやら左手武器は何でもいいみたいだね。
戦狼の牙刀は刀身がバトルウルフの牙で作られていて、切れ味はとてもいいけど、思ったほど丈夫ではないみたいな気がする。それに、修理するための素材がもう手元にないから大切に保管しておきたい。
逆に、左手に持っているスチールダガーは無骨な印象だけど、鋼をメインに鍛えられていて丈夫にできている。そのぶん、単体で使うと攻撃力は戦狼の牙刀に劣るけれど、右手の装備がディアホーンダガーになるなら、左手はスチールダガーのままでよさそう。むしろ、丈夫で、攻撃力が上がってくれるのだから、スチールダガーがいいよね。
(右手装備だけ、ディアホーンダガーに変更してくれる?)
《はいなのです》
ホログラム表示された試着モードのアオイの右手装備がディアホーンダガーに変わった。刀身が40㎝もあるので、刀身が25㎝ほどしかないスチールダガーがとても小さく感じる。でも……
(他にないからね、これで登録しておいてくれる?)
《保存したのですよ》
ナビちゃんに装備セットのアップデートをお願いするだけに
私は鍛冶師ギルドのヨセフがいる場所に移動し、声をかける。
「ヨセフさん、レベル20になりました」
「なんだ、嬢ちゃんかい。もうレベルが20になるなんて、よほど鍛冶が好きなんだな」
「いや、嫌いではないけど……ほどほどですね」
「おいおい、好きでもないのにこんなに早くレベルがあがるわけがないじゃないか……ちょうどいい依頼がある。領主からの依頼で、スチールアローのための部材が大量に必要なんだ。腕試しを兼ねてスチールアローヘッドを20個つくり、納めてくれ」
《鍛冶師サブクエスト「
クエスト番号:BS-005
クエスト種別:職業サブクエスト
クエスト名:
発注者:ヨセフ
報告先:ヨセフ
内 容:鍛冶師ギルドのヨセフが、領主から大量の
した。レベル20の腕試しとして、スチールアローヘッドを
20個つくって納めて欲しい。
報 酬:ミッドレンジブラックスミスキット
ミッドレンジクラフターグローブ
経験値10,000×2 30,000リーネ
「もちろんやります!」
「いい返事だ。コークス炉の使い方は知っているか?」
「大丈夫です」
「では、できあがったら持ってきなさい」
「そうだ、ついでに……」
私は急いでスチールアローヘッドのレシピを確認する。
〈スチールアローヘッド〉
スチールアローの
素材:
スチールインゴット×1
コークス×1
1つのインゴットから、4つのスチールアローヘッドを作ることができるから、20個つくるならスチールインゴットが5個必要になる。スチールインゴットを1つ作るには鉄鉱石とコークスがそれぞれ4つ必要になるから、必要な鉄鉱石とコークスも20個ずつ必要だね。そして、コークスを1つつくるのに石炭が2つ必要だから、全部で必要な石炭の数は30個。
鉄鋼石は、高品質なものが手元に残っている。でも、最終的にできあがったスチールアローヘッドはヨセフに引き渡してしまうことになるから、クエストで高品質な鉄鉱石を使う必要はないよね。
さきほど、ディアホーンダガーをつくるときに買った石炭は99個。
ディアホーンダガー自体はそんなにスチールインゴットを必要としなかったから、今回は石炭を買うほどのものじゃない。
「えっと、鉄鉱石を20個売ってください」
「おう、鉄鉱石20個で2,000リーネだ」
「ありがとうございます」
鉄鉱石を20個購入し、私はコークス炉のある場所へ移動し、コークスを30個、簡易モードで作成する。
(こうして考えると、次は錬金術師がいいのかな)
《絶対にこれを最初に始めたほうがいい、というのはないのですよ》
(でも、錬金術師をしておくほうが便利なことも多いんじゃないの?)
《糸を染色するために硫酸が必要になることや、皮の鞣し作業にタンニンやクロム液などが必要になること、魔道具師が用いる魔導インクなども錬金術師がつくるのです。でも、クラフター職をするうえで最も影響力があるのは調理師なのですよ》
(え、どうして?)
調理師は、調理器具が必要になるという意味で、他のクラフター職と関係があるのは間違いないけれど、調理師が他のクラフター職に何かを提供するのがあるんだろうか。
《調理師は一定時間だけ各種ステータス――STRやVIT、MND、INTなどに影響を与えたり、経験値を一定期間だけ数パーセントだけ増やしてもらえたりするのですよ》
(その話、とっても魅力的かも……)
時間限定だけど、特定の食事を摂れば、ステータスがアップすることがあるというのは前にもナビちゃんが言ってたね。そういうことなら調理師になるのも悪くないんだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます